茨城県北クリエイティブプロジェクト

大自然とノスタルジーが交差する暮らしの街・大子。カメラ女子による写真展「5 gallery’s 写真家女子の発表会」に行ってきた。(前編)

写真左から、サユリニシヤマさん、Mayumi Suzukiさん、Emi Cotsumeさん、大和田彩香さん。この日は都合によりノグチミカさんは不在。

「5 gallery’s 写真家女子の発表会」が、6/17(土)から開催中だ(以降、6/18(日), 24(土), 25(日)に開催)。この風光明媚な土地柄である大子が被写体としてふさわしいことは、一度でもここに来たことのあるひとなら理解できるだろう。しかし、“×「女子」”となると話は違ってくる。少子高齢過疎化に悩むこの町で、「写真家女子」が発表するというのだ。

危機的な人口減少の町でこそ

five gallery’sのフライヤー。大子にも活動拠点を置く大内智子氏によるデザイン。 5 gallery’sのフライヤー。大子にも活動拠点を置く大内智子氏によるデザイン。

茨城県の最北部、栃木県と福島県の県境にある大子町。「山あいの」という表現がよく似合うこの町は、全国の同じく山あいの町と同様、人口減少と高齢化により危機を迎えている。1940年代には4万人以上の人口を有していたものの、いまや2万人以下。しかも年間4〜500人のペースで減少し続けているのだ。

そんな停滞した状況のなかで、この数年、新しい時代の脈動が町の中心部から聞こえてくる。例えば昨年、「丘の上のゲストハウス daigo house」が開業したのに続き、ゲストハウスは今年中にもう1軒が続く予定(ちなみに最近までゲストハウスは県内に存在すらしなかった)だし、また築100年の古民家をリノベーションしてオープンしたカフェ「daigo cafe」や、シェアオフィス「daigo front」がオープンしたのもここ2〜3年のできごと。こうした動きに共振するように、町内各地で少しずつ、小さくも新しい動きが興っている。

大子町は、他の県北の自治体とくらべてもっとも人口が少なく、市街地も小さい。上に書いたように人口減少が猛スピードで進んでいるので、役場の危機感もひしひしと感じてくる。役場との距離が近いのでその気になれば動きは早い。「過疎」の危機に直面する街でこそ何かが起こるというのは、全国各地の事例を見ていてもよくある話だ。

水戸駅から水郡線に揺られて1時間強、常陸大子駅に到着。そこから写真展の会場までは歩いて5分ほどだ。

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会場の「麗潤館」は、もとは病院だった趣のある建物を2014年に改装してオープンした施設で、漆の植栽・保護と職人の支援・育成を目的とした同名のNPO法人が運営している。

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玄関の横にはモニュメント代わりだろうか、この施設の象徴として漆の木が立てかけられている。あまり知られていないが、茨城は岩手に次いで全国第二位の漆の産地。そのほとんどが大子町で生産されている。漆というと輪島塗が有名だが、その原料として大子のものが使われていることが多いのだ。

茨城県北で写真展などを開催できる場所は公共の施設以外ではそう多くない。まして、建物や室内の雰囲気にこだわるとなると、選択肢はさらに限られる。そう考えると、今回はこの場所で写真展が開催されるのは、主催者である大子町の期待の現れだろう。町が若い写真家の発表の場を用意して活動を後押しすれば、きっとこの街はもっと元気になる。そして何より、写真家にとって貴重な機会であるし、これからの活動の励みになる違いない。

5つの小部屋で、5つの個性が共振するギャラリー

展示室は5部屋。5人の写真家にひとり一室が割り当てられ、それぞれが撮影した写真を展示している。作品や写真家については次回のレポートを待っていただくとして、まずは簡単に紹介しよう。

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© サユリニシヤマ

水戸市の大学生、サユリニシヤマ氏の写真。一見してこれが何なのか理解できるひとはそう多くないはずだ。ぜひ会場で間近に見て推測してほしいので、あえて説明は控えておこう。

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© Mayumi Suzuki

城里町在住のMayumi Suzuki氏による、柔らかい色づかいと光が美しい写真。

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© ノグチミカ

ノグチミカさんの作品。半年ほど前まで益子の工房で陶芸のアシスタントとして働いていたが、この撮影をしたあとに写真家として生きていくことを決める。

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© 大和田彩香

北茨城在住の大和田彩香さんの作品。写真が瓶のなかに収められている。写真をスマホで見ることが当たり前になった時代に、この見せ方はとても新鮮だ。

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© Emi Cotsume

鉾田在住のEmi Cotsume氏によるセルフポートレート。自分自身を露出することを厭わず自由に表現する彼女の作品には、誰しも真摯に向き合わざるをえない。

そもそもこの写真展はなぜ “5 gallery’s(ファイヴ・ギャラリーズ)”なのか。そして、なぜ「写真」そして「女子」なのか。この展示の企画元であり、運営主体であるNPO法人まちの研究室の木村勝利さんに伺った。

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NPO法人 まちの研究室の木村勝利さん

今回で5回を数える「スキマスペースプロジェクト」の取り組みで写真展を企画しました。毎回この会場を使用しています。ここはもともと病院だったので、ギャラリースペースとしては個室が多いんです。だから、作家単体での展示会場としては使いにくい。でも、それを逆手にとって、ひとりひと部屋×5人の、合計5部屋でそれぞれ展示を企画することにしました。

この街で写真展を企画したのは良いとして、「女子」というのはどうなのかな、と。実際、女子というワードはやめようと思ったりもしましたが、でも、この大子の町で2~30代の女性が写真展をやるってことが町の次への活気につながるんじゃないかと思ったんです。

この企画が決まってから、いよいよ写真家のリサーチにとりかかった。大子の周辺で活動する写真家を徹底的にリサーチ。主にインターネット、SNSを活用したそうだ。県内とくに県北エリアで直接作品に接することができる機会はほとんどないため、InstagramやTumblrなどで作品を公開している写真家のなかで選りすぐった5人の写真家を招待した。

彼女たちの活動については次回詳細を伝える予定だが、彼女たちはいわゆる「プロ」として活動する写真家ではない。とにかく写真を撮ることが好きで好きで仕方がなかったり、あるいは、将来写真家として一旗揚げたいと思っているひとたちだ。「プロ顔負け」と言ってもけして言い過ぎではない。

上にでお見せした展示作品はほんの一部。本物はぜひ会場でご覧いただきたい。

次回の後編では、彼女たちにインタビュー取材して聞いた「大子で写真を発表すること」についてレポートしていきたい。

 

(次回に続く)


開催情報

「5 gallery’s 写真家女子の発表会」
開催日:2017年 6月17日(土)、18日(日)、24日(土)、25日(日)
時間:10:00-15:00
会場:麗潤館2F 茨城県久慈郡大子町大子705
入場料:無料
お問い合わせ: NPO法人 まちの研究室 0295-76-8025

主催 大子町 / 実施主体 NPO法人 まちの研究室


トークイベント情報

本展の開催を記念し、5人の写真家によるトークイベントを開催します。

開催日時:2017年6月25日(日)13時〜
会場:「麗潤館」6号室 ※写真展と同じ会場
入場料:無料
お問い合わせ: NPO法人 まちの研究室 0295-76-8025


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中岡祐介
株式会社三輪舎 代表取締役、編集者。1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。県北との縁は、ほとんどの同級生が通う水戸を避けたかったために日立の高校に進学したことからはじまる。2014年、「暮らしのオルタナティブを発信する」をミッションに、出版社である株式会社三輪舎を設立。現在は横浜に拠点を置きつつ、茨城で雑誌をつくるために定期的に茨城に通っている。
三輪舎 3rinsha.co.jp
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