茨城県北クリエイティブプロジェクト

大自然とノスタルジーが交差する暮らしの街・大子。カメラ女子による写真展「5 gallery’s 写真家女子の発表会」に行ってきた。(後編)

「大自然とノスタルジーが交差する暮らしの街・大子。カメラ女子による写真展「5 gallery’s 写真家女子の発表会」に行ってきた。(前編)」では、この写真展が開催されたきっかけや会場の様子についてお伝えした。

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サユリニシヤマさん(左上)、Mayumi Suzukiさん(右上)、Emi Cotsumeさん(左下)、大和田彩香さん(右下)。

今回は展示に参加した写真家のみなさんにスポットをあてて、大子で写真を撮ることについて、また大子の街そのものについて詳しく伺った。

懐かしいひと、懐かしい場所を思い出す街

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写真家の皆さんにとって、大子はどんな町なのか。

大好きだった祖父が昔、大子によく仕事で通っていたみたいなんです。私もときどき遊びにきては、ここに祖父がいたんだなって思い出しています。過去にあった生活の風景が残っている、世代のつながり、ひとのつながり、そういうものが感じられる街です。
(Mayumi Suzukiさん)

確かに、この街は住んだことがなくとも懐かしい。ひとびとが暮らし、積み上げてきた時間が、町内のいたるところに蓄積されている。

大子は、昔(住んでいた街)のページの続きのような、私が生まれ育った街(いわき市田人町)とつながっている気がするんです。今回の写真展の打ち合わせにきたときに、そう思って懐かしさを感じた。昔こんなところに住んでいたんだなって。
(大和田彩香さん)

山あいのわずかな平地にある大子町の市街地は、高度経済成長期に開発の手があまり入らなかったため、昭和の風景が色濃く残る。なかには昭和以前の、大正期に建てられたであろう建築物も散見される。茨城は東京に近く、なおかつ交通網が発達しているため、主要道路沿いはいわゆる「ロードサイド」の風景ばかりだ。もちろん、どの郊外だって旧街道に入ってしまえばノスタルジックな気分に浸ることはできる。しかし、大子のように街全体が郷愁を誘う街は県内において稀だと思う。

私にとって、大子といえば(今回の展示会場である)「麗潤館」です。古い建物だからといって壊さず、かといって保護しすぎていない。ちゃんと活用されているからいいんです。麗潤館だけでなくて、街自体が大切に扱われている印象があります。
(野口美佳さん)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 麗潤館。もとは医院だった建物を、NPO法人麗潤館が「漆の植栽、漆掻き職人の支援・育成、漆文化の振興・発展などの活動」拠点としている。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 旧・上岡小学校。2001年に廃校になるまで現役で使用されていた。地域活動の拠点として少しずつ利用されている。

古い町並みの残る街はたいてい莫大な予算をかけて改修・保存されることで観光地化されてしまう。立派な古民家があっても記念館や資料館になっていたりするので、あたりまえだが誰も住んでいない。大子町も場所によっては保存・改修されているところもあるし、観光地としても面白い場所である。しかし、市街地のほとんどは生活の場として機能しているのだ。

演出されたノスタルジーではない、生活臭のある街

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水戸の大学に通う大学4年生のサユリニシヤマさんは、今回の写真展が計画されるずっと前に、「NPO法人まちの研究室」の木村さん(前編参照)から、大子を撮ってくれないかと依頼を受けたという。大子の街を、大学生のような若い人たちはどう見るのか、どう撮るのかを知りたい、と。はじめて大子に来て撮影したとき、彼女はどう思ったのか。

大学の写真サークルの仲間たちと一緒に街中を撮りまくって思ったのですが、フォーカスがあたっていない、誰も撮っていないということは、まだまだ宝が眠っているんじゃないかって。
(サユリニシヤマさん)

この街は被写体として相当面白いという。若い感性を刺激するモチーフがいたるところにある。

魚の頭に割り箸が刺さっているものが道端に転がっていたり、庭先の見えるところにどう考えても洗っていない作業着が干してあるのが見えたり。大子って他の街にはないものをたくさん目にするんです。
(Emi Cotsumeさん)

そういうところに目をつけるところが写真家による目線の面白さだ。大子は、まったく演出されていない、生(なま)の暮らしを身近に感じられる場所なのかもれない。

大子で撮影していると地元の方から「うちの庭のこれもきれいだから撮っていって」と自然に声をかけてくれる。他人に対する関わりかたがちょっと違うと思う。私のような“変なひと”のことも受け入れてくれている気がするんです。
(Emi Cotsumeさん)

単にノスタルジックなだけではないし、単に生活臭がするというだけではない。観光客向けではない、人間的な付き合いができるのがこの街の魅力のひとつなのだと思う。

取材を終えて感じたこと

今回の写真展とそれに参加した写真家への取材を通して感じたのは、街の魅力を再発見するとき、写真家がどこにカメラを向けるのかがとても参考になるということだ。「街の魅力」というと大雑把で、人それぞれの価値観によるところが大きい。しかし、写真家が街に目を向けるとき、まだ誰も見ていないものを見たり、つまらないと思っていたものを面白がっていたりする。「観光」とは違った目線で街を再定義するには、街の少し外側に住む、新鮮な感性を備えた彼女のようなひとたちの目線が必要なのかもしれない。

写真展の会期は終了しているが、今後もシリーズで定期的に開催していくとのこと。
five gallery’s  facebook.com/5gallerys/
今後も引き続き動向を追っていきたい。

写真家のウェブサイト
サユリニシヤマ syr-nsym.tumblr.com/
Emi Cotsume cotsumephoto.com
Mayumi Suzuki mayumi-suzuki.com/
野口 美佳 www.mikanoguchi.com/
大和田彩香 sayakaowada.wixsite.com/furari

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