茨城県北クリエイティブプロジェクト

茨城県北はクリエイター移住の“フロンティア”【前編|しごとバー「里山の中で仕事しナイト」常陸太田/里山ホテル】

「人気のある地方」「あまり知られていない地方」

多少乱暴な分け方ですが、地方移住を検討しているひとたちにとって、このふたつの差は非常に大きなものです。

「人気のある地方」に移住するのはそう難しいことではありません。選択肢を知るためには、「移住 ランキング」とググってみれば一目瞭然。先輩移住者の多いエリアなので、コミュニティの垣根は低い。自治体側の受け入れもこなれているはずです。移住を決めれば支援金や住宅サポートなどのオトクな“特典”がついてくるし、その活用事例は山ほどでてくる。また、SNSを通じて移住先のキーマンとうまく繋がることができれば、お墨付きで移住できるので、失敗するリスクは格段に少なくなります。

一方、「知られていない地方」は、移住の先達がいないか、移住者がいたとしてもあまり情報がありません「茨城県北」とはそういうところです)。でも、だからこそ移住してみたいと思う天邪鬼な方もいらっしゃるはず。
せっかく移住するなら、山や海など自然環境が豊かなところに住みたいと思うひともいるでしょう(「茨城県北」とはそういうところです)
友人関係や、仕事のことを考えれば、東京などの大都市からそう遠くないエリアが良い(「茨城県北」とはそういうところです)

“大都市から遠くないところで、自然が豊かで、あまり知られていない地方”
一言で言えば、「茨城県北」とはそういうところです。
(くどいようですが…)

 

私たちのプロジェクト「茨城県北クリエイティブプロジェクト」はこの地域に興味を持つ、奇特な、面白いひとをサポートするプロジェクトです。そんな面白いひとにぜひ県北を体験していただきたいと思い、今回、茨城県庁と日本仕事百貨が連携して、県北エリアを回るツアーを企画しました。

そのプレイベントとして、東京の清澄白河にて「しごとバー」を二回にわたって開催。今回はその第一弾として9/15に開催された「里山の中で仕事しナイト」のレポートです。

自然豊かな場所でこそクリエイティブになれる

しごとバーの風景。参加者どうしの交流が盛んだ。

今回の「里山の中で仕事しナイト」の“バーテンダー”(しごとバーではゲストスピーカーのことをこう呼びます)は、常陸太田の藤野龍一さん(藤野さんと里山ホテルについてこの記事で詳しく知ることができます)。

お酒が入れば他人同士の交流も生まれる。

藤野さんがCMOとして運営する「里山ホテル」はもともと、国が所有する保養施設でした。

いくら施設だけを整えたところで、ご利用頂くお客様は自然には増えないんです。ハードだけをリノベーションするのではなく、ソフトのイノベーションを考える必要があるなと。ホテルの概念自体を変えざるをえないのが、この里山ホテルが置かれている立場でもあり、強みなのかなと思いました。

藤野さんはこう言っています。観光地をめぐるための拠点ではなく、都会では経験できない日常を過ごす拠点として、また地域で活動するひとたちのハブであることをコンセプトに、里山ホテルは運営されています。

出張や観光の通過点ではなく、そこで過ごしたり、仕事をする環境を楽しんでもらえたらいいなと思っていろいろ計画しています。例えば、映画『ロード・オブ・ザ・リング』に出てくるホビットの家みたいに、斜面に穴を掘って部屋をしつられる。そんなところでのんびり過ごせたら楽しいと思うし、仕事もはかどると思うんです。

参加者に熱心に語りかける里山ホテル・藤野龍一さん。

今回のイベントのなかで、日本仕事百貨のナカムラケンタさんは次のように参加者に向けて語りかけていました。

東京のオフィスやスタバでPCに向かってクリエイティブに仕事をするのもいいですが、たまには自然豊かな場所で、文豪みたいにホテルとか旅館に逗留しながら執筆したりデザインの仕事に取り組む。私も離島である新島でよく仕事をしますが、私の経験でいっても東京と比べてストレスも少ない。クリエイティブな仕事には環境がとても重要なんです。

日本仕事百貨を運営する株式会社シゴトヒト代表取締役・ナカムラケンタさん。

暮らしのために地方に住むこと

日本仕事百貨を運営し、ほぼ毎日のように開催されるイベント「しごとバー」。このイベントは<登壇者→参加者>という一般的なスタイルとは違い、“バーテンダー”としてゲストスピーカーが参加者に混じって同じ目線で話をできるのが特徴です。

常陸太田に縁があって参加されていた菊池さんにお話を伺いました。

私は生まれも育ちも東京です。いまはホテル関係の企業に勤めています。定年退職した父親が出身地である常陸太田にUターン移住したのと、妻の実家がいわきなんです。これからの暮らしのことを考えて、将来、県北エリアに拠点を置いて活動したいなと思っていたところ、このイベントに目が止まり、参加することにしました。

県北エリアに縁があることから将来の移住を検討している菊池さん。

もうひとり、田舎らしい田舎への移住を検討中の行川さん。現在はフリーランスで翻訳の仕事をされています。

東京での暮らしもいいですけど、やっぱり生活コストを抑えたいなと思っています。私はこの近く(清澄白河)に住んでいるのですが、「里山」という言葉に惹かれてここに来てみました。田舎暮らしの拠点として茨城は選択肢に入っていなかったのですが、今回お話を聞いてみて一度行ってみようと思いました。

田舎暮らしを考えている行川さん。

この行川さん。翌週のしごとバー「奥茨城クリエイティブナイト」にも参加されていたのでお話をうかがったところ、このイベントを機に「働き方を考える視察ツアー」に参加することを決めたそうです。

手垢のついていない“フロンティア”=茨城県北。

暮らしかた、働きかたについて、様々なひとと現場を見てきたナカムラケンタさんは、茨城県北エリアについてこう言っていました。

人気の移住先として名前が挙がってくる場所は、価値が上がりすぎて家賃も高くなり、生活コストが上がりつつあります。一方で、茨城県北は低コストで住むことができる。そして、東京から近いところにあるから多拠点居住のひとつにもなりえるのです。まだまだ知られていない未開拓地なので、これからなにかを始めるひとにはぜひ薦めたいと思います。

「未開拓地」であること。人気のある地方への移住も良いかもしれませんが、地元の方と移住者が新鮮な関係を築くことができるのは最初だけです。そして何より、地元のみなさんと一緒に街やコミュニティを作っていけるのはとてもやりがいがあるし、きっと楽しいはず。県北は「面白がる地方」なのです。


次回のイベントレポートでは、しごとバー第二弾として、大子町・和田宗介副町長をお招きして開催された「奥茨城クリエイティブナイト」についてご報告したいと思います。

Text 中岡祐介(三輪舎)/ Photo 山根シン

中岡祐介
株式会社三輪舎 代表取締役、編集者。1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。県北との縁は、ほとんどの同級生が通う水戸を避けたかったために日立の高校に進学したことからはじまる。2014年、「暮らしのオルタナティブを発信する」をミッションに、出版社である株式会社三輪舎を設立。現在は横浜に拠点を置きつつ、茨城で雑誌をつくるために定期的に茨城に通っている。
三輪舎 3rinsha.co.jp
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