茨城県北クリエイティブプロジェクト

あの丘にのぼれば、もっとこの町を好きになる。まちを想う人たちがつくりだす、茨城県北最大のクラフトマーケット「丘の上のマルシェ」に行ってきました。

東京やその近郊ではおしゃれなクラフト市がたくさん開催されています。

「こんなイベントが自分の地元にもあったらいいのに」

そう思ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

圧倒的な大自然、連綿と続く歴史の街、穏やかでひと懐っこいひとびと。そんな環境の中でつくられる、他とは一味違うイベントが、茨城県北地域でも開催されていることをご存知でしょうか。

バスに乗った時から、もうマルシェが始まっている

こんにちは。ライターの宮田晴香です。2017年3月まで大子町の地域おこし協力隊として従事したのち、現在はアンテナショップの運営サポートをしながら、ライターとして活動しています。

大子町でクラフトマーケット「丘の上のマルシェ」が、9月3日(日)に開催されました。

今までにない新しい雰囲気の、地元の若者が誇れるイベントつくりたい。

丘の上のマルシェ実行委員会の代表をつとめる木村勝利さんの、そんな想いから始まったこのイベント。2011年から毎年開催され今回で7回目を数えます。今年の来場数は過去最多、なんと2万人を記録。北関東でもよく知られるイベントへと成長しました。

会場となっているのは「大子広域公園」。キャンプ愛好家の間ではよく知られるキャンプ場「グリンヴィラ」や、温水プール施設「フォレスパ大子」を有する公園です。

大子町までのアクセスは、車の場合、常磐道那珂インターを降りて1時間、電車の場合、水戸から水郡線に乗り1時間20分。今回は、会場付近の駐車場は満車のため、町役場から出ている無料シャトルバスに乗り込みました。
シャトルバスの窓際に飾られたまちの名所や日常を切り取った写真。

シャトルバスには、日本三大名爆のひとつ「袋田の滝」をはじめ、大子町の名所や日常を伝える写真が飾られています。「袋田の滝行ったことないから帰りに寄ろうか」「冬の大子もこんなに素敵なんだね」という会話が車内で交わされているのが聞こえてきます。

いろとりどりのおしゃれなお店

10分ほどで会場に到着。会場を見渡して驚いたのはすごい来場者の数!飲食店の前にはおいしそうなフードを待つ人びとの行列が延びていました。飲食店のほかにはアクセサリー屋さん、お花屋さん、お野菜を売る農家さんと、136ものお店が出店していました。

ともつねみゆきさん制作のアクセサリー(大子町)

ウブさんのダリア」さんのダリア(福島県塙町)

農薬・化学肥料を使わずに育ててられた、さより農園さん(大子町)のお野菜。

出店者は町内・県内だけでなく、大子町に隣接する福島県や栃木県からまちにゆかりのある方まで、主催者である木村さんが様々なイベントに自ら足を運び、一人一人お声がけをして出店依頼をしてきた方々とのこと。販売されているものが素敵なのはもちろんですが、何よりみなさんの魅力的な人柄が心地よさを感じます。

まちに住む人たちもお店の店主に

本サイトでも以前紹介させていただいたた、鍛金(たんきん)作家であり、大子町地域おこし協力隊としても活動する、ともつねみゆきさんも出店されていました。

大子町地域おこし協力隊で、鍛金作家のともつねみゆきさん。

鍛金とは、銅板を使った金属工芸です。ともつねさんは、オブジェやアート作品、アクセサリーを鍛金で制作しています。丘の上のマルシェではアクセサリーの販売のほか、ともつねさんのファンは皆よく知るおたまじゃくしをモチーフにした作品の展示を行なっていました。大人も子どもも彼女の作品に引き寄せられている様子でした。

様々な場所に移り住みながら制作活動を行ってきたともつねさん。以前の取材で、大子町に移住するきっかけとなったのはこの「丘の上のマルシェ」だったと話していました。

最初の出店は雨でした。天気が悪いのに来てくれたお客さんには出店者の私が「ありがとうございます」ってお礼をいうのが普通ですよね。でも、このイベントに出店したときは、「ありがとーこんな雨のなか出店してくれて」ってお客さんの側から声をかけてくれた。こっちがありがとうなのに。

その後、大子町で地域おこし協力隊の募集があることを知り現職に至ります。着任後は、地元のNPO法人まちの研究室が企画するスキマスペースプロジェクト、「5gallerys 」 への出展や、「袋田の滝」のモニュメントのデザイン・制作、県北芸術祭のキュレトリアルアシスタントなど、様々な町のアート関連事業に携わってきたともつねさん。彼女のもとには代わる代わる町内外の方が訪れていました。

また別のエリアでは、大子駅前にある「daigo front」で今年の1月から開催されている手作り市「駅前☆ラウンジ 」の支配人を務める根本香さんが出店されていました。根本さんは、大子町出身。ご自身も布小物をつくる作家さんです。
根本香さん。大子駅前にある「daigo front」で手作り市「駅前☆ラウンジ」の支配人を務める。

「この前買っていただいたトマト、大丈夫でしたか」

ある町に住むご夫婦に声をかけていました。普段はまちのカフェでスタッフとして働き、コミュニティのなかで暮らしている根本さんならではの会話です。

根本さんが作ったサコッシュ。マルシェカラーで白と青の2タイプ。

いつもは優しいカフェのスタッフである彼女も、この日は丘の上のマルシェの一店主。今年はイベントとのコラボ商品を制作・販売していました。普段は町民としてまちに住む人達が店主となって作品を発表・販売することがきっかけで彼らの新たな一面を知る。これが「丘の上のマルシェ」の魅力だと思います。

イベントをつくるのは“まちを想う”人たち

このイベントを支え、出店者とともにつくりあげるのは、大子町を愛し想い続ける人たちです。まちで生まれ育った人やUターンで戻ってきた人、移住してきた人、まちに通い続ける人。

細やかな気配り。笑顔で来場者に丁寧な対応をする姿。特技を生かして来場者を楽しませる姿。丘の上のマルシェは大子町への感謝と愛を“おもてなし”に変えて表現できる場になっていると思います。

今年初めて作成されたスタッフの名札。つけて活動するスタッフもとても楽しそう。

「お久しぶりです!」

久しぶりの再会を確かめ合い、喜ぶ声が、出店者やお客さんのあいだで交わされています。大子町や茨城県北地域を想うひとびとによって運営され、そこから出店者同士広がるコミュニティの輪。この会場に漂う温かさは、スタッフと出店者が織りなすコミュニティが発する温度なのかもしれません。

あの丘にのぼれば、もっとこの町を好きになる

「丘の上のマルシェ」には素敵なクラフト作品だけでなく、大子町の暮らしをより楽しくしたり、大子町に訪れることを楽しみにしてくれる出会いが溢れています。

私は2017年3月までの1年間、地域おこし協力隊としてこの町に住んでいました。いまでもこうして通い続けているのは、丘の上のマルシェで出会えた人たちがいるのが理由のひとつです。経験の浅い22歳女子が、知り合いもなく、たったひとりで引っ越してきて、いろいろ悩んでいた時期に、スタッフとしてこのイベントに参加しました。

お兄ちゃんやお姉ちゃんのような少し年上の先輩から長くこの町で生きてきた大先輩まで、その全員とイベントを作り上げることがとてもおもしろかったのを覚えています。

マイクを持って得意の話術でイベントを盛り上げる学校の先生。
汗だくになりながら丁寧に駐車場の案内をする町の職員さん。
ちょっと強面だけどハートはとっても優しい会場の安全を守ってくれる林業組合のおとうさん。

普段はそれぞれ違う仕事をしているけど、この日は「丘の上のマルシェ」のスタッフや出店者として全員がキラキラ輝いていました。そのかっこいい町の大人の背中に魅せられて、ますますこの町や大子の人たちがすきになりました。そうした背中に魅せられているのはきっとわたしだけではなく、町の子どもたちもそうではないかと思います。「このイベントをきっかけに大子町への愛は受け継がれていくのでは」。そういう町の希望がこのイベントには溢れているように思いました。そんな「大子に来てよかった」という経験を1つ増やせた1日があったことを取材をしながら思い出しました。

また会いに行きたいと思う人たちがたくさんいる帰りたくなる場所。
スタッフを経験したわたしが見た「丘の上のマルシェ」は、そういう場所です。

あの丘にのぼれば、きっとあなたにも仲間ができます。
地方にある小さな町でおもしろく楽しく毎日を暮らしていくための。

開催情報

「丘の上のマルシェ」

  • 開催日:2017年 9月 3日(日) ※毎年開催
  • 時間:10:00-16:00
  • 会場:大子広域公園内
  • 入場料:無料
  • 主催:丘の上のマルシェ実行委員会
  • ウェブサイト:ameblo.jp/okanouenomarche/

文 / 宮田晴香|写真 / HANA-Studio(トップ画像含む)

宮田晴香
ライター。1993年生まれ、茨城県筑西市出身・在住。東京との二拠点生活を実践中。実家は米と梨の専業農家な農家の娘。
学生時代に茨城のアンテナショップ「茨城マルシェ」に勤務し、販売や地域を発信するおもしろさを知る。その後、新卒で茨城県大子町の地域おこし協力隊になり特産品のPRに従事。現在は販売の現場に戻り、アンテナショップの運営サポートをしながら、ライターとしても活動中。
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