茨城県北クリエイティブプロジェクト

“奥茨城”でクリエイティブに働くことは可能か?|日本仕事百貨とまわる「働き方を考える視察ツアー」レポート(3)大子町/視察編

地方で暮らし、クリエイティブに働くことは可能なのだろうか―――。

私たち「茨城県北クリエイティブプロジェクト」は、東京での働き方に疑問を持つひとに、自然豊かな“フロンティア”である「県北」というオルタナティブを提案するプロジェクトです。

日本仕事百貨」を運営する株式会社シゴトヒトと連携して開催したこの企画。ニューフロンティア「茨城県北エリア」に、これからの働き方の可能性を見つけるために企画された「働き方を考える視察ツアー」を10/28(土)〜10/29(日)と11/9(木)〜11/10(金)の2回にわたって開催しました。前回までの常陸太田市編に引き続き、第3回からは大子町編をお送りします。

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滝しぶきを浴びて心とからだをリセット

常陸太田・里山ホテルを出発し、再びバスに乗って大子町へ向かいます。前日は長時間にわたって根詰めて行われたワークショップ。その疲れを見せず、杯を交わし親交を深めたことで前日よりもメンバーの間で会話が弾んでいました。

ツアー1回目はあいにくの雨の中、大子町へ出発。ちなみに2回目は両日ともに快晴!

ひとつ目の目的地である、日本三大名瀑のひとつ「袋田の滝」。大子町が誇る最大の観光地です。ちょうど紅葉シーズン真っ只中で、樹木の色づきが見頃を迎えていました。

ここまで近づくことができる滝はなかなかありません。大雨のために水量が多かった1回目のツアーでは、展望台までしぶきが飛んできたほど。参加者の皆さんは、ここでマイナスイオンをめいっぱい浴びてリフレッシュ。かつて、平安末期〜鎌倉時代の僧であり歌人の西行が袋田の滝を訪れて「この滝は四季に一度ずつ来てみなければ真の風趣は味わえない」と称賛したとのこと( 出典:茨城県観光物産協会ウェブサイト)。茨城出身の筆者は何度もここを訪れましたが、西行の言うとおり。私のおすすめは厳冬の時期。滝が“全面凍結”することがありますが、いつもは勢い良く流れ落ちる水の動きがぴたと止まることで、まるで時間が止まったようになります。その静けさを味わいに、この冬に袋田の滝を訪れてみてください。

空き家活用を妄想せよ

大子町は人口減少と高齢化により、使われなくなった空き家が数多くあります。今回は県北で働くために視察ですが、実際の暮らしをイメージしてもらうために、空き家の視察を実施しました。

一回目のツアーでは年季の入った空き家を視察。

二回目のツアーでは、久慈川のほとり、落葉樹にかこまれた物件。

空き家といっても状態はよく、鮎釣りなどのレジャーの拠点として時々若者たちに貸していたとのこと。

地域に拠点を置くとして、すぐに移住に踏み込むことはほとんど困難。だからこそ、取得費用や維持費用を抑えて、少しずつ手をかけながら拠点づくりをしていきたいものです。ただ残念ながら安価な家賃の空き家物件は市場に出回っていません。大子町では移住を検討している方のために積極的に空き家物件を紹介しているので、検討中の方はぜひ連絡してみてください。

豊富な木材と加工現場とのコラボレーションの可能性

大子町といえば豊富な森林資源。街を取り囲むようにそびえる山々にはしっかり手入れされた良質のスギやヒノキが植生しています。大子町の北西部の山間で林業と木材加工を営む吉成木材さんを視察しました。

木材とその加工方法について熱心に説明してくれた吉成社長。惹きつけられるように見入る参加者。

吉成木材さんは伐採から製材、加工までを一社で引き受け、オーダーに応じてワンストップで対応することが強み。かつては日本の基幹産業のひとつであった林業は輸入材に押されて縮小してしまいましたが、大子町ではまだまだ健在のようです。

見学しながら参加者のなかで話題になっていたのは、吉成木材さんで働く皆さんがとても活き活きと仕事をされていたこと。けして見学者向けの姿ではなく、誇りを持って仕事に向き合っている様子が随所に表れています。都会のビル群のなかでPCのスクリーンに向かって働いているだけでは得られない「生きがい」のようなものをスタッフの皆さんの表情から感じ取ることができました。

ここでの視察は、この日の午後に行われるワークショップでどういう形で活用されるのでしょうか。

蓄積された時間こそ財産

続いて訪れたのは、旧・上岡小学校。昭和初期に建てられ、2001年まで現役で使用されていた木造の校舎がいまも残っています。(※1回目のツアーのみ訪問)

朝の連続テレビ小説「花子とアン」や「おひさま」のロケ地としても使用された。

閉校したあとは地元の有志によって維持管理され、町民の活動の場としても利用されている。

開校当初からの集合写真がいまも展示されている。

次に、大子町の市街地にやってきた参加者の皆さん。daigo frontでのワークショップに臨むまえに、商店街を視察します。

大子町の市街地。常陸大子駅の徒歩圏内にコンパクトにおさまるサイズの商店街。

 

大正期に建てられた建物をリノベーションして開業した「daigo cafe」。大子町ではレトロ建築がまだまだ現役です。

リノベーションを施され活用されている元・空き店舗の内部を覗き込む参加者の皆さん。

かつては4万人以上の人口を有し賑わった大子町は都市部への人口流出と高齢化により、現在の人口はその半分以下の2万人を下回っています。ただ、街を歩いていて気づくのは、ひなびてはいるものの、寂れているわけではないということです。シャッターが降りて人通りが少ないという、よくある地方都市の風景ではありません。けして多くはないですが、静かに人が行き交っています。

通りに面した建物は昭和初期のものや古くは大正期に建てられたものがあります。活気を取り戻そうと、大子町では若者や移住者へ空き家・空き店舗を積極的に紹介し、安易な開発に頼らないまちづくりを実践しています。その甲斐あって、少しずつではありますが、新たに街で商売を始めたひとも出てきています。

老舗の味と看板を引き継いだ「サンローラン」店主・菊池大貴さん。(撮影 2017/6/16)

常陸大子駅の目と鼻の先で営業するパン屋「サンローランもそのひとつ。40年近く営業を続けてきたパン屋が2015年に閉店し、その後、大子出身の菊池大貴さんによって引き継がれて、同じ場所で同じパン職人さんとともに再び開店しました。

大子町は街にかかわりたいというひとに対して積極的に間口を広げています。

ワークショップの会場、daigo front。この建物も元は写真館だったもの。リノベーションによってシェアオフィスとして活用されている。

大子町には袋田の滝のほか数々の名所があり、豊富な森林資源があり、そして蓄積された時間があります。これらの“資源”を使って、参加者の皆さんはワークショップに臨むことになります。

次回第4回はツアーレポート最終回。大子町で行われたワークショップの様子をお届けします。

中岡祐介

株式会社三輪舎 代表取締役、編集者。1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。県北との縁は、ほとんどの同級生が通う水戸を避けたかったために日立の高校に進学したことからはじまる。2014年、「暮らしのオルタナティブを発信する」をミッションに、出版社である株式会社三輪舎を設立。現在は横浜に拠点を置きつつ定期的に茨城に通っている。
三輪舎 3rinsha.co.jp

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