茨城県北クリエイティブプロジェクト

“奥茨城”でクリエイティブに働くことは可能か?|日本仕事百貨とまわる「働き方を考える視察ツアー」レポート(4)大子町・ワークショップ編

地方で暮らし、クリエイティブに働くことは可能なのだろうか―――。

私たち「茨城県北クリエイティブプロジェクト」は、東京での働き方に疑問を持つひとに、自然豊かな“フロンティア”である「県北」というオルタナティブを提案するプロジェクトです。

日本仕事百貨」を運営する株式会社シゴトヒトと連携して開催したこの企画。ニューフロンティア「茨城県北エリア」に、これからの働き方の可能性を見つけるために企画された「働き方を考える視察ツアー」を10/28(土)〜10/29(日)と11/9(木)〜11/10(金)の2回にわたって開催しました。前回の大子町視察編に引き続き、最終回の第4回は、大子町で行われたワークショップの模様をお送りします。

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大子町だからこそ、できること。

ワークショップの開催を前に参加者へ激を飛ばす、日本仕事百貨のナカムラケンタさん。

ナカムラケンタさんから出されたワークショップのテーマは、「大子町で働くとしたらどういう働き方ができるか」

いまの仕事を大子町でする、あるいは、仕事をつくって働くのでもいい。
忘れてはいけないのは、「主語は自分」ということです。こんなひとなら来るんじゃないかというのではなくて、「自分だったら」ということにこだわってほしい。
自分だったら、定期的にくる、お金を出してでも大子町に来たくなる。
そういうプランを皆さんで考えてください。

この街を舞台に、「自分」ならどんな働き方ができるのでしょうか。それまでと同じ働き方をただ続けるとしたらもったいない。ヒト(キープレイヤー、コミュニティ、自分自身など)、モノ(特産物、インフラ、空き家、観光地など)、コト(文化資源など)。それらをうまく掛け合わせた先に、その地域にとってベストな働き方があるはずです。

限られた時間でどれだけ完成度が高く、かつユニークなアイディアが出せるか。

事前に配布された空き家カタログ。

あえて「他にはあって大子町にはないもの」を強みにできないか、と議論。

大子町での働き方を考える場合、増え続ける空き家や商店街の空き店舗の活用は企画の前提となりそうです。また、ワークショップの前に見学した吉成木材さんとのコラボレーション。はたまた、小さい町だからこそ可能なコミュニティ・ビジネスも想定できます。

大子町役場まちづくり課の保坂課長

大子町役場・まちづくり課のみなさん

会場のdaigo front(ダイゴフロント)には大子町役場まちづくり課やNPOまちの研究室のみなさんが集結。視察ツアー参加者に混じって大子町の情報をアウトプットしていました。大子町の強みはなんといっても、街の活性化に賭ける彼らの熱意とフットワークの軽さ。この強みをプランづくりのヒントにしているグループもありました。

約2時間の話し合いを経て、ワークショップの成果物であるプランが各グループから、いよいよ発表されます。

もしも“私”が大子町で働くなら。

① 芸術活動拠点×コミュニティの場

このグループのプランは、駅前の空き店舗と一軒家を活用して、芸術活動と地域コミュニティの機能を併せ持ったカフェ・ギャラリーをつくるという案です。コミュニティから隔絶された環境で制作に没頭するタイプのいわゆる「アーティストレジデンス」ではなく、自らの作品作りをしつつ、地域の仕事を請け負いながら、カフェやギャラリーの運営も兼ねる。それによって収入が得ながら活動ができる。アーティストにとっては収入を得られるだけでなく、安価な生活コストで定住・試住しながら活動できるのがこの企画の大きなメリットになります。

② 電気・ガスだけでなく運営まで“オフグリッド”の宿泊施設

宿泊施設を提案したこのプランのユニークなところは、あえて電気・ガスのインフラを接続せず、エネルギーを自給する「オフグリッド」の考え方を取り入れていることです。大子町は市街地から少し足を伸ばせば眺望が開けた自然豊かな場所に行くことができます。その一方でインフラの整備が満足に行き届かない場所もあります。その整備にお金と時間をかけるよりも、あえてインフラを手放す。田舎であることを逆手にとれば、半分アウトドアのような環境でバーベキューや星空観察をしたり、畑仕事に親しむこともできるはず。また、ここに一時的な生活拠点を置きたい希望者によってこの施設の管理運営がおこなわれることを想定しているため、維持コストを最小限に抑えることができるとのこと。その発想もまた「オフグリッド」といえるかもしれません。

③ 大子の木を活用する「森のクラフトセンター」

「森のクラフトセンター」と題されたこのプランでは、廃校になった木造の校舎を拠点として、大子町産の木材を使用した家具の制作拠点をつくるというもの。基本的には職人によって制作されるが、地域の高校とつながったり、観光客向けのワークショップをおこなうことも想定。また、重要なのは、ここで制作された家具は町内で使用されるものに限り割引になること。将来的には町内の店舗や町役場、学校などで使用される家具がすべてクラフトセンターで制作された製品に置き換えられることで、街をショールーム化して観光資源にすることも視野に入れるとのこと。

今回、吉成木材さんの視察に多めに時間を割いたこともあって、木の町である大子にスポットをあてたプランとなりました。

④ 創業しやすい街・大子を演出するビジネス

このグループの「創業パッケージプラン」はとてもユニーク。都会で起業しても成功する自信がないというひとのために、町役場や商店街が一体となって大子町での創業を後押しするプランです。大子町を活動の場として選んでもらうために、まずは滞在費を1ヶ月負担。希望すれば、紹介された店舗で働きながら町の状況を吟味することができます。街との相性が良いと思ったらこのパッケージを20万円で購入。その後は、事業の場となる空き家や空き店舗をリノベーションするための工具や材料の貸与、商店街で営業する店舗の商品別データベース、また、ウェブサイト制作のバックアップなどが受けられる。開業までの1年間は準備期間として住宅費を無料。開業後は定額でPR支援を受けられるとのこと。

昨今、地方の街にとっては既存の事業者の支援だけでなく、新規創業支援が急務となっているようです。単なる相談窓口の設置や創業資金の支援だけでなく、具体的に地域コミュニティとつなげるためのサービスを志向している点がとてもユニークでおもしろかったです。

どのプランも限られた時間のなかで真剣に議論されてひねり出されたことが感じられる労作ばかり。これらのプランが実現するかどうかはこれからの動き次第ですが、ワークショップを終えたあとの参加者の表情は、すでに大子町への親しみが浮かんでいるように感じられました。

「働き方を考える視察ツアー」を終えて

2日間 × 2回の茨城県北「働き方を考える視察ツアー」を終えて、レポーターとして同行した筆者が感じたことを少しだけつづってみたいと思います。。

日頃都会で暮らし、都会で働いているひとが、例えば常陸太田や大子のような片田舎に身を置いて「ここで自分が働くなら」と妄想をドライブさせることはとにかくワクワクするものです。

都会ではすべてが商品やサービスになっていて、暮らしに必要なものをいつでも買うことができるし、交通は便利。教育も就活も婚活も子育ても、ライフステージにあわせてサービスが整っています(もちろん、それらのサービスを享受するためにはそれなりに経済的に自由でないといけないわけで、だからがむしゃらに働く…)。何か困ったことがあっても、それに対応したサービスや商品がある。

でも、このことを裏を返せば、何も自分で事業を始めなくても誰かがすでにやっている、ともいえる。よほど有能なひとでない限り、都会で、誰もやっていないことに挑戦して成功するのは難しいものです。

でも、都会を離れて地方に来てみると、誰もやっていないことばかりです。マーケットはさほど大きくないけれど、だからこそ競合する商品やサービスも生まれにくいブルーオーシャンが広がっています。あれもできる、これもできる、と、これからの働き方を想像する余地がたくさんあるのです。ビッグビジネスをしようと思わず、小さく、ひととのつながりのなかで生きていこうとするなら、チャンスは至るところにある気がします。

そんなことを感じたツアーでした。

さいごに、ワークショップを終えた後に撮影した集合写真で締めくくりたいと思います。みなさんの表情はどれも清々しかったです。また県北に遊びに来てくれるとうれしいです。(了)

前期(10/28-29)参加者のみなさん

後期(11/8-9)参加者のみなさん

 

中岡祐介
株式会社三輪舎 代表取締役、編集者。1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。県北との縁は、ほとんどの同級生が通う水戸を避けたかったために日立の高校に進学したことからはじまる。2014年、「暮らしのオルタナティブを発信する」をミッションに、出版社である株式会社三輪舎を設立。現在は横浜に拠点を置きつつ定期的に茨城に通っている。
三輪舎 3rinsha.co.jp
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