茨城県北クリエイティブプロジェクト

バカのハサミは高級品 / 連載・生きるための道具 #02 (生活芸術家・石渡のりお)

生活芸術家・石渡のりおさんの連載「生きるための道具」第2回です。

受け継いだ道具のこころ / 連載・生きるための道具 #01

石渡さんは現地にある暮らしの素材をコラージュして作品をつくるアーティストです。パートナーであるチフミさんとともに世界中を旅しながら作品を発表。この数年は国内複数箇所の空き家に住みつつ、移動しながらユニークな手法で制作をつづけています。 また、2017年4月から北茨城市の地域おこし協力隊として、旧富士ヶ丘小学校に設置されたシェアオフィスを拠点に活動中です。現在(3/18日時点)開催中の「桃源郷芸術祭」にも参加され、自身の手で改修した築80年の古民家をギャラリーにしたてた「ARIGATEE」で作品を発表されています。

ぼくがつくるモノは、コラージュ作品です。はじめは雑誌を切り貼りしていたのですが、異なる素材を組み合わせて現れる偶然のカタチを追求するうちに、出会った人や文化、歴史、環境を題材に作品をつくるようになりました。

古い木材を鉋(かんな)で削って再利用する

古いモノに光を。新しく色を添える。

空き家を改修するのも作品のひとつです。アートの語源はアルスで、技術という意味です。ぼくは、この根源的な意味がとても大切だと思っています。つまり、アートとは生きるための技術だということもできるのです。(これまでの活動を「生きるための芸術」として出版していますので、ぜひ読んでみてください)自分たちのすべての活動を総称して「生活芸術家」という職業にして夫婦で生きています。

北茨城の古民家

まさに「好きこそものの上手なれ」です。「好き」という想いは伝わるもので、北茨城市では、江戸末期の古民家に巡り合うことができました。2017年の10月から片づけや掃除、廃材を集めたり、改修して、ギャラリー兼アトリエArigatee をつくりました。(3月14日~18日に開催される桃源郷芸術祭に出展します)。

生きるための道具

この家を改修している作業の途中、サトシくんのお爺さんから譲り受けた鑿が、いよいよ切れなくなってきたのです。それまでのぼくは、壊れたら捨てて、新しいモノを買っていました。しかし、職人さんの道具は売っていないのです。その素晴らしい道具は、手入れをして「自分でつくる」モノだと気づかされたのです。

あるイベントで布を切るのを手伝ってもらったときのことでした。

「これはいいハサミだね。研いだ方がいい。」

初老の男性にそう声をかけられました。

翌日、砥石を持って来て、ハサミを手入れしてくれたのです。ハサミの刃を研ぎながら、その人は言いました。

「ぼくの前職は、服飾メーカーの生地工場で働いていたから、ハサミは毎日使っていたんだ。商売道具だから切れなきゃ仕事にならない。だから毎日仕事の最後にはハサミを研いだ。翌日すぐにはじめられるようにね。子供に刃物を触らせないほうがいいって言うけど、刃物が危ないからじゃない。落としたり、触ったりして刃が悪くなるからだよ。いつの間にか意味が変わってしまったんだ」

ぼくは、その話を聞いてさっそく、切れなくなった鑿の刃を研ぐことにしました。よく観察してみると、短くなったエンピツのような鑿もありました。むかしなら、職人さんに弟子入りして技を盗むように学んだのでしょうが、いまは、インターネットで検索すれば、やり方はみつかります。あとは、やってみるだけです。

このことをきっかけに「道具」について、考えるようになったのです。人類は、自然を利用して道具をつくり、使いこなし、さらに発展させ、文明を形作ってきたのです。人間とモノ。わたしたちの暮らしを取り囲むように、さまざまなモノがあります。古いモノほどつくりはシンプルに、火、土、水、風、木、自然の摂理を利用してつくられています。

人間は生命活動を補助するためにモノを利用してきたのに、モノを大量生産するために、いつのまにか、人間の方が、経済効率を上げるための道具になってしまったのです。

これから、どのようなライフスタイルが、わたしたちの未来や環境にベストマッチするのでしょうか。それを考えて行動するのが、生活芸術の役割だと思っています。

石渡のりお

1974年、東京生まれ。音楽イベントの制作、アーティストマネージメント会社を経て、芸術家として独立。結婚を機に夫婦で檻之汰鷲(おりのたわし)としてアート活動を始める。2013年、世界5か国に滞在しアート作品を発表。ザンビアで泥の家を建てたのをきっかけに帰国後、日本国内の空き家を旅する。2016年ニューヨークで個展。2017年初の著書『生きるための芸術』を出版。現在、北茨城市を拠点に「芸術によるまちづくり」実践中。

http://orinotawashi.com/

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