茨城県北クリエイティブプロジェクト

「土」を供給するウェブマガジン。茨城県北クリエイティブプロジェクトのこれから。

こんにちは。2017年度に引き続き本ウェブマガジンの編集をしております、三輪舎の中岡と申します。

「茨城県北クリエイティブプロジェクト」の任にあたって一年。茨城県北を、とくにこのウェブマガジンのミッションの特殊性を記事のなかでどう表現すればよいのか、編集長の山根晋氏と議論を交わしつつ試行錯誤しながら、記事を制作し、配信してきました。

今年度の「茨城県北クリエイティブプロジェクト」を再スタートするにあたり(少し出遅れておりましたが)、最初の一年でわかったことや気づいたことを踏まえて、これからの一年、どういう記事を配信していくのか、宣言めいたものを少しばかり書き綴ってみたいと思います。

このウェブマガジンのミッション

このプロジェクトの目的は、東京にほど近く、自然の豊かな地域である一方で、県内でもとくに人口の減っている茨城県北エリアに外から人を呼び寄せること。ありていにいえば、「地域活性」です。

移住したいひとに向けて、自治体は「移住特典」を用意してきました。例えば、格安の新築住居、子育て支援、創業支援…。どこでも同じような施策を実施するようになってそれだけではあまり効果はみられなくなったのか、今度は“魅力の発信”が求められているようです。地域の特産品やおしゃれなお店、あるいは地域で活躍するひとびとのサクセス・ストーリーをまとめて発信するメディアが全国各地でこぞって立ち上がっています。まさに空前の地域メディア群雄割拠の戦国時代。メディアが発信する記事がSNSを通して拡散し、それまで縁がなかったひとのところにも届けばきっと「関係人口」は増えていく。そのなかから実際の移住者が増えていけば…。本ウェブマガジンもそうした流れから生まれた、と理解をしています。

ただ「移住特典」同様、「地域の魅力の発信」も、地域の特性は違えど同じようなメッセージ、同じようなコンテンツが目につくようになってきました。「最先端の田舎」「新しい暮らし方」「コミュニティ」… 。たいがいこんな言葉が並んでいます。そういうトレンドにおいて後進である「茨城県北クリエイティブプロジェクト」が同じ土俵で戦っていくのは難しいんじゃないか、どうしたって埋もれてしまうんじゃないかと思うようになりました。

また、本ウェブマガジンの特殊な点として、単なる移住促進ではなく「クリエイター」に来てほしい、というコンセプトがあります。移住するクリエイターに地域の仕事を担ってもらって、あわよくばそのクリエイティブ・スキルが県北のヒトモノコトと化学反応を起こしてほしい… 。それが、茨城県の思惑であり、この事業を受託して記事を制作しているぼくらのミッションであります(汗)。そのことを考えると、すてきなカフェ紹介やパン屋、ゲストハウスなどの情報、よくありがちなヒューマン・ストーリーは、移住を考えるクリエイターにとってなんら肥やしにならないのです。

もちろん、この一年のあいだにわずかながら変化はありました。東京圏から来たデザイナーさんが県北の既存の事業とコラボして新しい製品が生まれた複数の事例や、二拠点生活のいち拠点としてオフィスをひらき、現地で精力的に仕事をされている事例もあります。しかし、正直なところ、手応えとしてはいまひとつ。そもそも、それらの成果はまさにこのウェブマガジンによるものだと、胸を張って言うことは難しいし、そもそも事例の数もそう多くありません。

「土」を供給するメディア

都市圏に住むクリエイターが、ゴマンとある地域の中から茨城県北を選んでもらうとしたら、それはいったい何が決め手になるのだろうか。先ほど書いたとおり、ぼくらはクリエイターの移住促進というミッションを負っていますが、では、そもそも移住希望のクリエイターは地域に何を欲しているのだろうか。

原点に立ち返り、今後の方向性を改めて考えていくなかで、ヒントになった言葉がありました。

イメージした通りのかたちをつくるのが陶芸だという考えもあります。
でも、先に“相手”としての土があって、それとどう付き合うか、そこにぼくの興味がある。

今年3月に特集した、高萩の陶芸家・沼田智也さんの言葉です。地元高萩の土に向き合いながら手を動かして作品づくりをしているひとこその言葉だと思いました。

陶芸家・沼田智也さんがイメージよりも、まず土と向き合ったように、地域がクリエイターに貢献できるとしたら、作品の「イメージ」ではなく「土」の供給です。

「地域の魅力」を言葉にし、それらしいイメージをこちら側で構築し、用意し、メディアをとおして届けるということは筋違いなのかもしれません。よくよく考えてみれば、地域で仕事を作り出そうとする真のクリエイターなら、お仕着せのイメージを活用したり、消費したいとは思わないでしょう。

そうすると、導き出されるひとつの仮説は、このウェブマガジンで発信すべきは「魅力」ではなく素材、ということになります。茨城県北ひいては地域の魅力をメディアが勝手に決めてはいけない。恣意的な編集は避け、素材をできるかぎり供給して、イメージづくりはクリエイターに委ねたほうがいい。

というわけで、今期、茨城県北クリエイティブプロジェクトは、県北の「土」=素材を読者の皆さんに供給することをコンセプトに記事を配信していきます。なかなか難しい仕事になるので、記事によってその質は変化すると思いますが、前年度までとはひと味ちがった記事をお届けできると思います。

いまのところ、以下のような内容を連載企画として進めております。

  • 見えていたけれど見たことがない事実、例えば、工業都市・日立を成立せしめた地層。
  • とことん時間をかけてつくるけど、とことん素朴な素材、例えば、和紙や凍みこんにゃく。
  • もう存在していないけれど、関わったひとの記憶の中で生きつづける、クリスト&ジャン・クロードのアンブレラ・プロジェクト。

など。

クリエイターに向けたウェブマガジン、と何度も書きましたが、このサイトが職業に関係なくたくさんの方にご愛読いただいていることを知っています。この記事がなにかのきっかけになったらとてもうれしいです。感想やご意見などございましたら、ぜひお寄せください。コンタクトフォームまでどうぞ。

本年度もどうぞよろしくお願いいたします。

中岡祐介

株式会社三輪舎 代表取締役、編集者。1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。県北との縁は、ほとんどの同級生が通う水戸を避けたかったために日立の高校に進学したことからはじまる。2014年、「暮らしのオルタナティブを発信する」をミッションに、出版社である株式会社三輪舎を設立。現在は横浜に拠点を置きつつ定期的に茨城に通っている。
三輪舎 3rinsha.co.jp

Topへ