茨城県北クリエイティブプロジェクト

#01 ワーホイ!ワーホイ!|ケンポク切絵探訪記

朝9時、水戸駅で小林敦子さんと合流。

小林「どこに行くんでしたっけ」
中岡「さぁどこへ行きましょう。とにかく北へ向かいましょうか」

ということで、ひとまず茨城県北の最奥部、大子町へと向かうことにした。プロローグに書いたとおり、この日帰り旅に目的地はない。結論ありきではない取材をして、記事を書くという目的のみが存在するのだ。

水戸から大子町へ北上するには下道しかない。八溝山から流れる久慈川沿いに南北に走る国道118号をひたすら車で北上する。水戸市から那珂市に入り、30分もすれば、やがて「県北」の南端である常陸大宮市へと至る。

国道沿いには大型のチェーン店が立ち並んでいる。巨大なケーズデンキが目に入る。

中岡「ケーズデンキの“ケー”って何の“ケー”なのか知っていますか」
小林「えーと、えーと」
中岡「加藤さんの“K”なんですよ。昔はカトウデンキっていう名前だったんですよ」

はたして、この旅で取材すべき対象は見つかるのだろうかと、不安になる。ふと車窓を見やると、いつしか田園風景が広がっている。

小林「中岡さん!これ!車を止めてください!」
中岡「は、はい!」

我々の目に突然、不思議な風景が飛び込んできた。

ワーホイ 1月12日実施」とある。

看板のそばには、4本の長い竹が立っていて、「鳥追い」「ワーホイ」と書いてある。なんだろう!? 車をそばに止めて近づいてみる。

稲藁を三角錐になるように積んだ、高さ5メートル以上の大きなヤグラ。

竹が組まれている。外側を何かで覆えば、中は畳3畳ほどの小屋になるだろう。

大空に掲げられていた「鳥追い」とは、毎年小正月(1/14・15)に東日本の農村で行われているお祭りで、子どもたちが鳥追唄を歌いながら鳥追棒で鳥を追払うさまを演じ、害鳥に田畑を荒されないように祈る。上の竹組みは製作途中の小屋のようで、実際には外側は覆われる。お祭り当日、子どもたちはこの小屋に入って餅を食べ、「ワーホイ、ワーホイ」と唱えながら夜を過ごしたことから、いつしか行事の名前に転化していったようだ。ちなみに、この三角錐のヤグラには正月飾りを入れて、燃やしてしまう。いわゆる「どんど焼き」である。茨城県のあちこちで、名前は違えど、こうした「どんど焼き」と「鳥追い」が合わさった行事が行われているらしい。

あいにく、ワーホイが行われる1/12にここに来ることは難しいが、来年はちゃんと計画して、子どもたちを連れてここに来ようと思った。ボォーボォーと火柱を立てて燃え盛る様子を見たら、きっと大喜びするに違いない。街の暮らしでは焚き火さえ禁じられているのだから、こんな行事には絶対にお目にかかれないだろう。ワーホイを見たことのある人生と見たことのない人生だったら、見たことがある人生が良いに決まっている…。とぼんやり考えているあいだ、小林さんは黙々とスケッチしていた。

***

後日、切絵と手書きのコメントが送られきた。

ワーホイに突然出会えたことによって、これからの旅路が楽しみになった。

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絵・小林敦子
編集/文/写真・中岡祐介(三輪舎

 

小林 敦子(こばやしあつこ)
1989年岡山生まれ。筑波大学芸術専門学群美術専攻特別カリキュラム版画卒業。2014年よりフリーのイラストレーターとして活動。切り絵や水彩で身近なモチーフを描く。料理と植物とDIY好き。ktasybc.tumblr.com
中岡祐介

株式会社三輪舎 代表取締役、編集者。1982年、茨城県ひたちなか市生まれ。県北との縁は、ほとんどの同級生が通う水戸を避けたかったために日立の高校に進学したことからはじまる。2014年、「暮らしのオルタナティブを発信する」をミッションに、出版社である株式会社三輪舎を設立。現在は横浜に拠点を置きつつ定期的に茨城に通っている。
三輪舎 3rinsha.co.jp

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