茨城県北クリエイティブプロジェクト

#06 そして、冒険は続く|凍みこんにゃくをめぐる冒険

私がデザインした凍みこんにゃくの試作品を、袋田食品の高村さんにお見せするときが、ついにやってきました。

デザインしたものを最初に見せるときは、いつだって緊張を伴います。相手が期待してくれているなら、なおさらです。やれることはやったけれども、これでダメならまたここから頑張ります、という気持ちで高村さんに試作品をお見せしました。

「お〜なるほど。この形は想像していなかったな。うんうん、これはいいですね!いいなぁ。」

高村さんの反応は上々でした。その瞬間、よかった…!と安堵の気持ちに包まれました。

試作品を確認する袋田食品の高村和成さん

消費者にも生産者にも嬉しいパッケージ

試作品として形になった凍みこんにゃくのパッケージは、正方形の封筒に丸窓をつけた形になっています。窓からは凍みこんにゃくの模様が印象的に見えるしかけです。包装はできるだけシンプルにすることで、凍みこんにゃくの模様が主役となり、その味わいが感じられるようにしました。

商品名は手書きにし、手作りの素朴さが感じられるようにしています。また、並べた凍みこんにゃくを連想させるマークをつけることで、ぱっと見たときに視覚に残りやすい工夫を施しました。商品名を掲載したシールははっきりした色を使い、全体の印象を引き締めています。

想定している販売価格はワンコインで買える価格に設定。手軽に買える値段であることを心がけました。

初回に提案した、パッケージの試作品。

さてこの封筒の形、どこかで見たことがありませんか?

実はこれ、CDやDVDを入れる封筒を利用しています。今回、パッケージを作る際にできるだけ気を配ったのは、いかにパッケージのコストを抑えるかということです。現在の凍みこんにゃくは9枚入り約1100円で売っていますが、それでも生産者さんの利益は多くないのが現実です。とはいえ少量サイズの商品はワンコインで買える価格にしたいと思っていました。なぜなら自分自身が商品を買うなら、そのくらいの価格でないと手が出しづらいと思うからです。消費者にとっては買いやすく、生産者にとっては利益が出るものをつくるためには、少しでもパッケージにかかるコストを抑える必要があります。そのため、既存にあるもので何か使えるものはないかと素材を探しました。

そこで目に入ったのが、CD封筒です。この封筒はシンプルな形状ながら正方形と円の対比が美しく、窓がついていることで凍みこんにゃくの模様をみせるにもピッタリです。凍みこんにゃくは直接封筒に入れるのではなく透明のビニール袋に入れていますが、このビニール袋も袋田食品さんで現在使っているものを利用できるようにしています。封筒のサイズは通常のCD封筒より大きめのものを発注する必要がありますが、それでもオリジナル封筒をゼロから作るよりもコストを抑えることができました。商品名のシールは1色刷りにすることでインク代を抑えています。

こうしてできあがった試作品。高村さんは何度も「これはいいなぁ」と言って喜んでくれました。コストや価格について話したあとは、「ちょっと他の従業員にも見せてみます」と、その場で他のスタッフの方にも意見を聞くことができました。そのとき店内にいたのは40~50代の女性が数名と男性が一名。みなさんの反応は「現代的で若い人向けな感じがするね」「ワンコインで買えるなら、手軽に買ってみることができていいね」となかなかいい感触です。帰宅後、高村さんから「あの後社内で改めて共有したところ好評価でした」と嬉しいご連絡をいただきました。

高村さん以外の方からも直接意見をいただくことができました。

このときの試作品では、コストを考慮しつつ素朴な風合いが出るようにとクラフト紙を使っていましたが、後日、高村さんから「社内で袋を茶色ではなく、黒にしてみては?という意見がありました。確かに凍みこんにゃくは白なので色の濃い紙にすることでかなり映えるかもしれません」というご意見をいただきました。

そこで紺色の紙で試作品を作り直してみたところ、凍みこんにゃくが引き立つとともに上質感が格段にアップした印象に。また、紙は少し厚みを持たせて流通に耐えうる仕様に調整。高村さんも私も「こちらのほうがいいですね!」と納得できる仕上がりになりました。

このとき、高村さん個人の意見でなく社内での意見をいただけたことは大きな進歩だと感じました。また、試作が進んで商品が具体的になるごとに「はじを切り落としたバージョンをつくるのはどうですか」「ここの色はこちらに変えたほうがいいかもしれません」と積極的な意見を言っていただけるようになり、『提案する側とされる側』という関係性から『一緒に商品をつくる同志』という関係性に変化しつつある手応えを感じました。ここまでやってきて良かった、そんなことを感じる瞬間でした。

そして3月末現在、さらに改良を進めながら、販売の実現に向けて引き続き準備を進めているところです。店舗でみなさんのお目にかかる日も、そう遠くはないはずです。

紺色の紙で作り直したパッケージ。はじを切り落としたバージョンもご提案。

IBARAKI senseに制作中の商品を試し置き。ここに並ぶ日を想像しながら現在も邁進中です

そして、冒険は続く

茨城県北を訪れ、凍みこんにゃくと出会い、ビジネスコンペティションに挑んで、生産者のみなさんと一歩ずつ進んできた約1年半。まだ道半ばではありますが、凍みこんにゃくを通してたくさんの出会いと発見に満ちた1年半になりました。そしてこの期間中、自分を取り巻く環境も、仕事におけるやりがいも、大きく変化しました。そもそも「この仕事は誰のためになっているんだろう」という鬱屈した思いを抱えていたところから全ては始まりました。

でもこの挑戦を始めて分かったのは、仕事は誰かのためにと思うよりも、すぐそばにいる人の喜びが自分の力になると思ったほうがやりがいを感じるということです。誰かのために何かのためにと思うほど仕事の手応えは掴みにくいですが、そばにいる人が笑顔になったり喜んでくれるだけで自分自身が満たされるということに気がつくと、どんなささいなことでも意味のあることにつながっているのではと思えます。そんな仕事の喜びがあることを教えてくれたのは、他ならぬ凍みこんにゃく生産者のみなさんです。ただただ、感謝の気持ちでいっぱいです。

このプロジェクトが今後どうなっていくのかは、私自身にも分かりません。袋田食品さんだけでなく、中嶋商店さんや大子グルメフーズさんと新しく始めたいと思っていることもあります。

まだまだここからが始まりです。凍みこんにゃくをめぐる冒険は、これからも続いていきます。

フリーランスデザイナー。1985年生まれ、愛知県岡崎市出身。武蔵野美術大学を卒業後、デザイン会社勤務を経て独立。「茨城県北ビジネスプランコンペティション2017」で「”Shimikon” Branding Project~『凍みこんにゃく』のストーリーを伝える、新しいブランディング~」を提案し、奨励賞を受賞。現在は横浜を拠点に、地域の課題解決に関わるデザインに取り組んでいる。

Topへ