茨城県北クリエイティブプロジェクト

かっこつけず、丁寧に、“つくる”きっかけをつくっていく。このウェブマガジンのこれからについて考えたこと。

こんにちは。今年度からこのウェブマガジンの編集に携わっている中川晃輔です。普段は、いろんな生き方・働き方を伝える求人サイト「日本仕事百貨」を運営しています。

こちらの編集に携わるのは「今年度から」なのですが、じつは、茨城県北クリエイティブプロジェクトとの関わりは4年目に突入しています。きっかけは、3年前に開催した「働き方を考える視察ツアー」。多拠点で生活したい、働きたいという人たちと一緒にバスに乗り込み、大子町と常陸太田市を巡って、自分だったらどんな働き方ができるだろうか?と考えるツアーを企画しました。

その翌年は「しごとをつくる合宿」を開催。北茨城市を舞台に、2泊3日のフィールドワークを通じて見つけた資源や課題をヒントに、事業プランを起案・発表するというものです。地域にやりたい仕事がないのなら、自分でつくろうという発想から企画しました。

そして昨年度に開催したのが「地域を編集するゼミ」です。日本仕事百貨では、インタビューや写真撮影、記事執筆にいたるまで、編集者一人ひとりが担当しています。その過程で、地域の人と出会って深くコミュニケーションし、風景を眺めたりおいしいものを食べたりといった体験を重ねるうちに、その地域への親近感が湧いてくることを実感してきました。だったら、ゼミという形でこれを体験してもらうことで、総合的な“編集力”を身につけるとともに、地域との関わりを生み出せないか。そんな試みでした。

3年前も、今も、プロジェクトの目指すところは、大きくは変わっていません。茨城県北地域に関わる“クリエイター”を増やすこと。そしてその関わりをより豊かにしていくことです。この3年間に取り組んできたことも、このウェブマガジンが発信してきたことも、すべてそこへとつながってゆきます。

今から2年と少し前に、編集者の中岡さんがこのウェブマガジン上に、こんな記事を投稿しました。

―「土」を供給するウェブマガジン。茨城県北クリエイティブプロジェクトのこれから。

地域との新しい関わりを持ちたいと考える人に対して、「特典」を用意するのでも、「魅力」を発信するのでもなく、クリエイティブの素材となる「土」を供給していく。それこそ、このウェブマガジンを通じて実現していくべきことなんじゃないか。そんな姿勢を表明する文章です。

実際、全国のいろんな地域で、その地に移り住んだ人たちの話を聞いていくと、この文章の意味がよくわかります。語るうえで、何かわかりやすい「きっかけ」を示してくれる人も多いけれど、その人を動かす原動力となったものは、たいてい「特典」でも「魅力」でもない。中岡さんが「土」と呼んだもの、それはつまりクリエイターにとっての「素材」であり、やわらかく言い換えるなら「関わりしろ」のようなものだと思います。

「これ!」と言えるきっかけが、あらかじめ地域の側や自分のなかに用意されているわけではなくて。訪れて、知って、風景に、人に、触れた瞬間に感じる「何か」。言葉にできないそれが生まれるから、人はどうしようもなくその地へと動かされてゆくのだと思うのです。

2020年。コロナ禍を通じてさまざまな変化が起こりました。

前例のない状況のなかで、頭をひねり、行動を起こしていく。今、ある意味では、誰もがクリエイターです。「作品」や「成果物」を生み出さなくても、日々工夫しながら暮らしていくことであったり、当たり前にやってきたことを見直したり。新しい日常をつくっていく過程には、じつはクリエイティブの余地がたくさんあります。

そんな時代にあって、このウェブマガジンに求められる役割も、少し変わってきているのかもしれません。従来の“クリエイター”が敷居の高いものだったとしたら、そのハードルを下げていく。何かをつくり、生み出すことを、自分ごととして感じられるような機会をつくっていく。それにつながる情報を発信していく。

そうして「茨城県北には、なにやら楽しげにつくっている人が多いな」ということが見えてくると、地域と(広い意味での)クリエイターとの関わりは、じわじわと広がっていくように思います。

わたしたちは拠点を東京に構えているため、今年は茨城県北に足を運べない時期も長く、思うように進まないこともありました。ただ、ようやくですが、少しずつ何をすべきか見えてきた感じがしています。

現時点でひとつ、やってみたいなと考えているのは、茨城県北に関わりはじめた「ニューカマー」の人たちのインタビューです。

その地に根づいて脈々と暮らしてきた方や、何かを成し遂げた方のお話はおもしろいです。学べること、そこから得られる気づきもたくさんあります。

とはいえ、まだ茨城県北と関わりのない方や、これから第二第三の拠点を探したいという方のなかには、遠く感じる方もいるかもしれません。「すごいな」「理想的だな」とは思うけれど、暮らしも、仕事のあり方、考え方も、いまの自分とはあまりに違っていて真似できない。そう感じてしまったら、そこで足が止まってしまいます。

その点、「ニューカマー」の視点は等身大です。これから地域とどう関わっていこうか、何に取り組んでいこうか、模索している段階。何かの兆しや縁をその地に感じて、関わりはじめている。そして今まさに、自分の暮らしや仕事をつくりあげている。

理想と現実のギャップも、泥臭いエピソードも聞こえてくるかもしれません。でも、先立ってその地に関わりはじめた人が、何を感じ、どんな試行錯誤を繰り返して今に至るのかを知ることで、背中を少し押される人もいるんじゃないでしょうか。

そしてもうひとつ、地域に関わる入り口として可能性を感じているのが「きっかけワーク」です。これは、茨城県北で事業を営む方々が「スタッフをひとり採用するのはむずかしいけれど、案件単位でクリエイターの力を借りたい」というとき、このウェブマガジン上で募集をかけるもので、過去にも何度か掲載をしています。

先日、過去のきっかけワークでよいご縁につながった方々に話を聞いて、これはおもしろいと思いました。地域に足りないスキルや経験を、外部のクリエイターが補う“だけでなく”、協働を通じて既存の仕事のあり方まで変わっていくような出会いになっていたのです。(インタビューの内容は、後日こちらに掲載します)

もちろん、すべてのきっかけワークがよい結果につながっているとは限らないのですが、うまくこの仕組みを機能させれば、いろんな可能性が広がっていくように感じています。よい事例を記事で紹介していきつつ、より多くの方にきっかけワークを活用していただける方法を考えていきます。

ほかにも、このウェブマガジンを読んでくださっている方や、茨城県北在住の方々とも一緒にコンテンツをつくっていきたいです。みなさんの見つけた風景、暮らしの工夫、考えなど。この場そのものが、何かを生み出すきっかけになれたらと思っています。

当初は「クリエイティブプロジェクトという名前に負けないように、何か立派なことを書かなければ」と意気込んでいました。でも、発信するわたしたち自身が力んでいたら、そこで何かがはじまる余白は生まれません。

かっこつけず、つくる楽しみを感じながら、どんどん手を動かしていこうと思います。よろしくお願いいたします。

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