エマグラリフロジンと他の薬の比較:効果、副作用、価格の違い
- 三浦 梨沙
- 28 10月 2025
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エマグラリフロジンは、2型糖尿病の治療に使われるSGLT2阻害薬の一つです。2014年に日本で承認され、以来、多くの患者に処方されています。でも、エマグラリフロジンだけが選択肢ではありません。リバロ、ダパグリフロジン、レナグリフロジンなど、似た働きをする薬が次々と登場しています。どれが自分に合っているのか、効果、副作用、価格、使いやすさを比べてみましょう。
エマグラリフロジンとは?基本的な働き
エマグラリフロジンは、腎臓のSGLT2というタンパク質を阻害することで、尿に糖を排出させる薬です。血糖値を下げる仕組みは、インスリンに頼らない点が特徴です。インスリンが足りなくても、糖を体外に流すことで血糖をコントロールできます。これは、特にインスリン抵抗性が強い人や、体重を減らしたい人にとって大きなメリットです。
臨床試験では、エマグラリフロジン10mgを1日1回服用した患者のHbA1cが、平均で0.7%下がりました。さらに、心不全のリスクを25%以上減らす効果も確認されています。これは、単なる血糖降下薬ではなく、心臓と腎臓を守る薬としての価値が高まっている理由です。
リバロ(シルグリフロジン)との比較
リバロは、エマグラリフロジンと同じSGLT2阻害薬ですが、日本では2021年に承認された比較的新しい薬です。両者の効果は似ていますが、いくつかの違いがあります。
- 血糖降下効果:リバロはエマグラリフロジンとほぼ同等で、HbA1cを0.6~0.8%低下させます。
- 体重減少:エマグラリフロジンは平均2.3kg、リバロは約2.1kgの減量効果があります。
- 心臓への影響:エマグラリフロジンは心不全のリスク低下で圧倒的なエビデンスがありますが、リバロのデータはまだ限られています。
- 価格:両者はほぼ同じで、1日あたり約120円(一般薬価)です。
リバロの特徴は、尿糖排泄量がやや多いことです。これは、より強い血糖降下効果を期待できる一方で、脱水や尿路感染のリスクがやや高くなる可能性があります。特に高齢者や水分摂取が少ない人には注意が必要です。
ダパグリフロジン(アストラゼネカ製)との違い
ダパグリフロジンは、世界で最も広く使われているSGLT2阻害薬の一つです。日本でも2015年から使用されています。エマグラリフロジンと比べて、最も大きな違いは「心臓と腎臓の保護効果のエビデンスの広さ」です。
- 心不全のリスク低下:ダパグリフロジンはエマグラリフロジンと同程度の効果があり、心不全入院を30%減らすデータがあります。
- 腎機能の保護:ダパグリフロジンは、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果が明確に証明されています。エマグラリフロジンも同様ですが、ダパグリフロジンの研究はさらに大規模で、1万人以上の患者を対象にしています。
- 副作用:両者とも尿路感染や性器感染のリスクがありますが、ダパグリフロジンでは脱水症状がやや多いという報告があります。
- 価格:ダパグリフロジンはエマグラリフロジンよりやや安めで、1日あたり約105円です。
もし、すでに腎臓の機能が少し落ちている、または心不全のリスクが高いなら、ダパグリフロジンが選ばれることが多いです。エビデンスが豊富で、長期的な安全データが充実しているからです。
レナグリフロジン(ノボノルディスク製)の特徴
レナグリフロジンは、2022年に日本で承認された最新のSGLT2阻害薬です。この薬の最大の特徴は「SGLT2だけでなく、SGLT1も阻害する」点です。SGLT1は腸での糖吸収に関わるため、食後の血糖値の上昇をより抑えることができます。
- 食後血糖値の抑制:レナグリフロジンは、食後の血糖値を他のSGLT2阻害薬より15~20%強く下げます。
- 体重減少:エマグラリフロジンとほぼ同じで、約2.0kgの減量効果。
- 胃腸の副作用:SGLT1を阻害するため、下痢や腹痛がエマグラリフロジンよりやや多いです。特に食後に症状が出やすいです。
- 価格:1日あたり約130円と、やや高めです。
レナグリフロジンは、食後の血糖値が特に高い人、または食事の量やタイミングが不規則な人に向いています。でも、胃腸の不快感が続くようなら、他の薬に変更した方がいい場合もあります。
どれを選ぶべき?患者ごとの推奨
どれが「一番いい」薬かは、患者の状態によって変わります。ここでは、代表的なケース別に推奨をまとめます。
- 心不全や腎臓病のリスクが高い人:ダパグリフロジン。エビデンスが最も豊富。
- 体重をしっかり減らしたい人:エマグラリフロジン。減量効果と心臓保護のバランスが最良。
- 食後の血糖値が極端に高い人:レナグリフロジン。食後抑制に強い。
- 高齢者で水分摂取が不安な人:リバロよりエマグラリフロジンを優先。脱水リスクがやや低い。
- 予算を抑えたい人:ダパグリフロジン。価格が最も安い。
すべてのSGLT2阻害薬は、インスリン注射やメトホルミンと組み合わせて使うことが多いです。単独で効果が不十分な場合、医師は他の薬と併用することを検討します。
副作用と注意点:共通のリスク
エマグラリフロジンを含むSGLT2阻害薬は、すべて同じような副作用のリスクを持っています。特に気をつけるべきは以下の3つです。
- 尿路感染と性器感染:尿に糖が出てるため、細菌が繁殖しやすくなります。女性ではかゆみや痛み、男性では包皮の炎症が起きやすいです。普段から清潔を心がけ、異常な排尿感があれば早めに受診。
- 脱水と低血圧:尿の量が増えるため、水分不足になりやすいです。特に夏場や運動後、高齢者は注意。のどが渇いたら、こまめに水を飲む習慣をつけましょう。
- 糖尿病性ケトアシドーシス:まれですが、血糖値が高くなくても起こることがあります。吐き気、腹痛、息切れ、倦怠感が続くなら、すぐに医療機関へ。これは緊急事態です。
これらの副作用は、薬をやめればすぐに改善します。でも、自己判断で止めないでください。医師と相談して、別の薬に切り替えるのが安全です。
薬の選び方:医師とどう話すか
薬を変えるとき、患者がすべきことは「自分の生活と症状を正直に伝える」ことです。
例えば:
- 「最近、トイレの回数が増えすぎて、夜に起きるのがつらい」→ 脱水や感染の可能性を疑う
- 「食後、血糖値が急に上がる」→ レナグリフロジンを提案してもらう
- 「体重は減ったけど、足がむくむようになった」→ 心不全の兆候の可能性がある
薬の価格や、1日1回の飲みやすさも、重要な判断材料です。エマグラリフロジンは、朝に飲むのが一般的ですが、他の薬は夜でもOKです。生活リズムに合わせて、飲みやすい薬を選ぶことも大切です。
今後の展望:新しい治療の可能性
2025年現在、SGLT2阻害薬は、糖尿病治療の中心的な存在です。しかし、次世代の薬も開発中です。GLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド)とSGLT2阻害薬の併用は、体重減少や心臓保護の効果がさらに高まると期待されています。
また、エマグラリフロジンのジェネリック薬は、2026年以降に日本でも登場する予定です。価格が半分以下になる可能性があり、多くの患者にとって大きな恩恵になります。
今のところ、エマグラリフロジンは、効果、安全性、価格のバランスが最も良い選択肢の一つです。でも、他の薬も、それぞれの特徴で優れた点があります。医師と相談しながら、自分に合った薬を見つけてください。
エマグラリフロジンは糖尿病以外の病気にも効くの?
はい、エマグラリフロジンは2型糖尿病だけでなく、心不全や慢性腎臓病の治療にも使われます。特に、心不全の患者で血糖値が高めの場合、エマグラリフロジンは心臓の負担を減らす効果が明確に証明されています。2023年の国際ガイドラインでは、心不全の患者にはSGLT2阻害薬を優先的に使うよう推奨されています。
エマグラリフロジンを飲んで、低血糖になることはありますか?
単独で飲む分には、低血糖のリスクは非常に低いです。エマグラリフロジンはインスリンの分泌を促さないからです。しかし、スルフォニルウレア系薬(例:グリメピリド)やインスリンと併用している場合、低血糖になることがあります。そのときは、医師に薬の量を見直してもらう必要があります。
エマグラリフロジンとリバロ、どちらが新しい薬?
エマグラリフロジンは2014年に日本で承認され、リバロは2021年です。つまり、リバロの方が新しい薬です。でも、新しいからといって必ずしも良いとは限りません。エマグラリフロジンは10年以上の使用実績があり、長期的な安全性データが豊富です。リバロはまだデータが少ないため、特に高齢者や複数の薬を飲んでいる人には、エマグラリフロジンが優先されることが多いです。
ジェネリック薬はいつから使えるようになる?
エマグラリフロジンの特許は2025年12月に切れる予定です。そのため、2026年春以降に日本でジェネリック薬が販売される見込みです。価格は現在の半分以下になる可能性があります。ジェネリック薬は、有効成分が同じなので、効果や副作用もほぼ同じです。ただし、添付文書に記載されている製造元や添加物が異なるため、体に合わない場合は医師に相談してください。
エマグラリフロジンを飲むと、尿が甘くなる?
尿に糖が排出されるため、尿のにおいが少し甘く感じる人がいます。これは正常な反応です。でも、尿が非常に甘い、または白い結晶が見える場合は、薬の効果が強すぎている可能性があります。そのときは、医師に相談して、用量を見直してもらう必要があります。また、尿の色が濃い、尿量が極端に少ない場合は、脱水のサインです。水分をしっかり摂ってください。