海外で薬局や診療所を検索するための旅行アプリの使い方

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海外旅行中に急な体調不良や薬が切れたとき、現地の薬局やクリニックを見つけるのは意外と難しいものです。言語の壁、薬の名前が違う、保険が使えない……そんな悩みを解決するのが、旅行アプリです。これらのアプリは単なる地図アプリではなく、海外で医療を受けるためのリアルタイムなガイドです。2023年時点で世界中で1500万人以上が利用しており、特にヨーロッパでは68%の旅行者が日常的に使っています。

なぜ海外で薬局やクリニックのアプリが必要なのか

日本では「薬局」は街角にたくさんありますが、海外では状況が全く違います。たとえば、フランスでは処方箋がないと市販薬が買えない国もあります。タイでは同じ成分でもブランド名が違うため、日本で処方された薬の名前を言っても、薬剤師が理解してくれません。アメリカでは、薬の価格が地域によって10倍以上変わることもあります。

2022年のCDCの調査では、海外旅行中に薬の問題で医療機関を訪れた人のうち、37%が「薬の名前や成分が伝わらなかった」ことが原因でした。これは、アプリを使えばほぼ防げる問題です。たとえば、Convert Drugs Premiumというアプリを使えば、日本で処方された「アモキシシリン」が、イタリアでは「Amoxicillina」と呼ばれ、ブラジルでは「Amoxicilina」と表記されることを即座に教えてくれます。

主要な5つの旅行アプリとその特徴

現在、世界で使われている主要なアプリは8つありますが、特に実用性が高いのは以下の5つです。

  • Convert Drugs Premium:薬の成分の同等性に特化。220カ国分の薬の名前と成分を対応。iOS専用で有料(7.99ドル)。処方箋の薬の成分を入力すれば、現地で手に入る同じ効果の薬を即座に提案。日本で処方された「メトプロロール」が、ドイツでは「Metoprolol」、韓国では「メトプロロール」で売られていることを教えてくれます。
  • Air Doctor:テレメディシン(遠隔診療)が強み。195カ国で25,000以上の医療機関と連携。24時間対応の多言語サポートあり。診察料は1回49~79ドルですが、夜間や現地で言葉が通じないときに頼れる唯一の選択肢です。2023年の調査で、従来の方法より平均42分早く医療対応が可能になりました。
  • mPassport:クリニックの予約と薬の同等性の両方をカバー。35,000カ所以上の医療施設を地図上に表示。主要都市(東京、パリ、シンガポールなど)では予約が可能。ただし、田舎や発展途上国ではカバー範囲が限られます。
  • TravelSmart:保険と連携するのが最大の特徴。Allianz Global Assistanceの保険に加入している人向け。5,000以上の薬の名称を翻訳。診療所の予約だけでなく、保険請求の手続きもアプリ内で完結。ただし、保険に加入していないと機能が大幅に制限されます。
  • Epocrates:医療従事者向けのアプリですが、旅行者にも有用。110万人以上の医師が使っている信頼性の高いデータベース。薬の副作用や相互作用の確認が可能。無料版でも基本的な薬の情報は見られます。

アプリの選び方:あなたの旅に合ったのはどれ?

どのアプリを選ぶべきかは、あなたの旅行スタイルで決まります。

  • 処方薬をたくさん持っていく人 → Convert Drugs Premium。薬の名前が現地でどう変わるかを事前にチェックできます。
  • 急な発熱や腹痛で困りたい人 → Air Doctor。深夜でも医師とビデオ通話で相談できます。
  • 保険に加入している人 → TravelSmart。診療費の清算が楽になります。
  • 長期滞在やビジネス出張 → mPassport。予約できるクリニックが多いので、計画的に医療を受けるのに最適。
  • 薬の副作用が心配な人 → Epocrates。薬の相互作用や禁忌を確認できます。

経験者によると、1つのアプリだけでは不十分です。SmarterTravelの2023年調査では、87%の旅行者が2~3つのアプリを併用していました。たとえば、Convert Drugs Premiumで薬の名前を確認し、Air Doctorで緊急対応をセットアップするのが最強の組み合わせです。

外国の薬局で薬の名前が通じず困惑する旅人と薬剤師、成分の文字が浮かぶ

実際に使うための準備ステップ

アプリをダウンロードするだけでは、いざというときに使えません。次の手順で準備しましょう。

  1. 旅行の2~3週間前からアプリをダウンロード。アカウントを作成し、ログイン情報をメモしておきます。
  2. 自分の処方薬の「ジェネリック名」を調べてメモ。たとえば「アムロジピン」は「Amlodipine」です。ブランド名(ローザン)では検索できません。
  3. オフライン機能があるアプリ(TravelSmart、Pepid)は、Wi-Fiがなくても使えるように、事前にデータをダウンロード。
  4. 現地の医療機関の電話番号をアプリで確認し、メモしておきます。アプリが使えないときのための「バックアップ」です。
  5. 処方箋のコピーと、薬の包装を必ず携帯。薬剤師が「これは何?」と尋ねたときに、パッケージを見せれば即理解されます。

よくあるトラブルとその対処法

アプリを使っても、トラブルは起こります。特に多いのは以下の3つです。

  • アプリが繋がらない:海外ではWi-Fiが不安定です。Air DoctorやmPassportはオフライン機能がないため、モバイルデータ(SIMカード)必須。ローカルSIMを事前に買っておくと安心。
  • 薬が見つからない:特に発展途上国では、日本で使っている薬がそもそも販売されていない場合があります。そのときは、Air Doctorで代替薬を相談。または、現地の薬局に「成分名」で尋ねてください。
  • 保険が使えない:TravelSmartはAllianzの保険がないと機能制限。他の保険会社の人は、診療後に領収書を取って、自国の保険に請求する必要があります。
朝の街で旅行アプリのホログラムに囲まれる旅人、処方箋と薬のパッケージを握る

専門家のアドバイスと注意点

アメリカの旅行医療の権威、NYUランゴン病院のデイビッド・オシンスキー博士は、こう言っています:「これらのアプリは、旅行前の医師との相談の代わりにはなりません。慢性疾患がある人や妊娠中の人、子供の薬は、必ず事前に医師に確認してください」

また、ヨーロッパ疾病対策センター(ECDC)は、2024年1月からEU内で電子処方箋が相互に使えるようになると発表しました。つまり、EU内では薬の同等性アプリの必要性が減る可能性があります。しかし、それ以外の国では、今後もアプリの役割が重要になります。

次に何をすべきか?

今すぐできることを3つ紹介します。

  1. スマホにConvert Drugs PremiumかAir Doctorのどちらかをインストール。
  2. 自分の処方薬のジェネリック名を1つでも調べて、アプリに入力してみてください。
  3. 旅行先の国で、最寄りの病院の名前と電話番号をアプリで確認し、メモしておきましょう。

海外で医療を受けるのは怖いことではありません。情報さえあれば、誰でも安心して対応できます。アプリは、あなたの命を守るためのツールです。旅の前に、たった10分だけ準備してみてください。

海外で処方箋が通らないとき、どうすればいいですか?

処方箋そのものは海外では通用しません。代わりに、薬の「ジェネリック名」(成分名)と「用量」をアプリで確認し、現地の薬局にその名前で尋ねてください。たとえば、「アムロジピン10mg」なら、日本でも海外でも同じ成分です。Convert Drugs PremiumやmPassportなら、その成分が現地で何と呼ばれているかを即座に教えてくれます。

無料のアプリでも十分使えますか?

はい、ただし機能に制限があります。Epocratesの無料版は薬の成分情報が十分に使えます。TravelSmartの無料版は、薬の名前検索はできますが、予約や保険連携はできません。有料アプリ(Convert Drugs PremiumやAir Doctor)は、緊急時に確実に医療を受けるための「保険」のようなもの。命に関わる場合は、有料アプリの利用を強くおすすめします。

Androidユーザーは使えるアプリが少ないですか?

以前はそうでしたが、2023年以降、状況が変わりました。Convert Drugs PremiumはiOS専用でしたが、2023年6月にAndroid版の開発を発表しました。現在はAir Doctor、mPassport、TravelSmart、EpocratesがAndroid対応しています。Androidユーザーでも、十分な選択肢があります。特にAir DoctorはAndroidで最も信頼性の高いアプリです。

薬を現地で買うと、日本と効果が違うことはありますか?

成分が同じなら、効果は同じです。ただし、添加物や製造工程が違うため、まれに副作用が出ることがあります。たとえば、日本の「アムロジピン」は、インド製の同じ成分の薬より吸収が速い場合があります。アプリで「同等性」を確認すれば、成分が同じかを確認できます。効果の差は、薬の「ブランド」ではなく、「成分」で判断してください。

緊急時に、アプリが使えない場合の対策は?

アプリが使えないときは、現地の「救急車」の番号(112や911など)を直接呼びましょう。また、ホテルのフロントに「医者を呼んでほしい」と英語で頼むのが一番確実です。さらに、処方箋のコピーと薬のパッケージを常に携帯しておけば、薬剤師が「これは何?」と尋ねたときに、パッケージを見せるだけで理解してくれます。アプリは補助ツール。物理的な証拠(薬の箱、処方箋)が最も頼りになります。