薬が引き起こす血栓:早期発見と予防の具体的なヒント

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血栓リスクチェックツール

薬を服用中の方は、血栓リスクをチェックしましょう。年齢や服用中の薬、リスク因子に基づき、リスクレベルを評価します。

年齢を選択してください。

リスク評価結果

薬を飲んでいるのに、急に足が腫れた、息が苦しい、胸が痛い--そんな症状が出たら、それは単なる疲れではないかもしれません。実は、が原因で血の塊(血栓)ができている可能性があります。日本でも、毎年数千人が薬に関連する血栓で命を落としています。でも、これは予防できる病気です。正しい知識があれば、大きなリスクを避けることができます。

薬が血栓を引き起こす仕組み

私たちの体は、けがをしたときに血が止まるように、自然に血を固める仕組みを持っています。でも、ある薬はこのバランスを崩してしまうのです。特に問題になるのは、エストロゲンを含む薬です。避妊薬や更年期のホルモン療法に使われるこれらの薬は、血液を固まりやすくする成分を増やし、逆に固まりにくくする成分を減らします。

研究によると、エストロゲンを含む避妊薬を飲む女性は、飲んでいない人よりも血栓のリスクが3~5倍高くなります。特に、第三世代と呼ばれる避妊薬(デソゲストレルやゲストロレンを含むもの)は、第二世代(レボノルゲストレルを含むもの)よりもさらに1.5~2倍リスクが上がります。更年期のホルモン療法でも、エストロゲンとプロゲステロンの両方を含む薬は、血栓リスクを2~3倍にします。60歳以上の女性では、このリスクがさらに跳ね上がります。

がんの治療薬も注意が必要です。シスプラチンなどの化学療法薬は、血栓のリスクを4~7倍にします。乳がんの治療薬タモキシフェンは2~3倍、前立腺がんのホルモン療法も1.5~2倍のリスクを高めます。これらの薬は、がんを治すために必要ですが、血栓のリスクを無視することはできません。

血栓のサインを見逃さないために

血栓は、足にできることが多いですが、肺や心臓にまで達すると命に関わります。まずは、足の血栓(深部静脈血栓症:DVT)の兆候を覚えましょう。

  • 片方の足、特にふくらはぎが腫れる
  • 足に鈍い痛みやこむら返しのような不快感がある
  • 皮膚が赤く、熱を帯びている
  • 足が重く、だるい感じが続く
もし血栓が肺に飛んでしまった場合(肺塞栓症:PE)、もっと深刻な症状が出ます。

  • 理由なく息切れが急にひどくなる
  • 深く息を吸うと胸が痛くなる
  • 脈が早くなる、動悸がする
  • めまいやふらつき、気を失う
これらの症状は、薬を飲み始めた直後--特に最初の3~6ヶ月以内--に起きやすいです。60%以上のケースがこの時期に発生します。だから、薬を飲み始めたばかりの人は特に注意が必要です。

診断はどんな検査でわかるの?

症状が出てから病院に行けば、すぐに血栓の有無がわかります。まず、血液検査でD-ダイマーという物質の値を測ります。この値が高いと、体内で血栓が作られている可能性があります。ただし、この検査は「陰性」ならほぼ安全、でも「陽性」でも必ず血栓があるとは限りません。

足の血栓が疑われる場合は、超音波検査(エコー)で血管の中を直接見ます。この検査は安全で、痛みもありません。でも、5~10%の確率で見逃されることがあります。肺の血栓が疑われる場合は、CT検査で肺の血管を詳細に調べます。

がん患者さんには、コラナスコアというリスク評価ツールが使われます。このスコアは、がんの種類、血液検査の値、体重の変化などから、血栓のリスクを数値化します。スコアが2以上なら、予防のための薬を勧められます。

圧力靴下を着用した女性の足から肺へと向かう血栓が浮かぶ医療シーン

予防のための3つの具体的な方法

血栓は、薬をやめなくても予防できます。医師と相談して、次の3つの方法を組み合わせるのが効果的です。

1. 圧力靴下(弾性ストッキング)を使う

足に圧力をかけることで、血液の流れを良くし、血栓のできにくくします。医療用のストッキングは、足首で15~20mmHg、太ももで5~10mmHgの圧力がかかるように設計されています。これを24時間つけていないと効果が半減します。3~6ヶ月ごとに新しいものに交換しましょう。フィットが悪いと、かゆみや皮膚の傷の原因になります。

2. 薬で予防する

高リスクの人には、抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)が処方されます。入院中や手術後には、エnoxaparin(エノクサパリン)という注射薬がよく使われます。これで血栓のリスクを60~70%減らせます。

外出先や在宅で使うなら、リバロキサバンやアピキサバンなどの経口薬(DOAC)が主流です。毎日決まった量を飲むだけで済み、血液検査の必要がありません。でも、出血のリスクは注射薬より1.5~2倍高くなります。そのため、医師とリスクとメリットをよく話し合って決めましょう。

3. 長時間座らない、水分をしっかり取る

飛行機や車で長時間座っていると、血栓のリスクが上がります。世界血栓デー推進委員会のデータでは、4時間以上のフライトでは、1時間に1回は席を立って歩くだけで、血栓のリスクを30%減らせます。席に座ったままでも、足首を上下に動かす運動を30分ごとに10回やると効果があります。

また、水分をこまめに取ることも大切です。1時間に240~300ml(コップ1杯)の水を飲むようにしましょう。脱水状態になると、血液がドロドロになり、血栓ができやすくなります。

誰が特に注意すべき?

すべての人が同じリスクではありません。次の人は、薬を始める前に必ず医師に相談してください。

  • 過去に血栓を経験したことがある人
  • 家族に血栓の歴史がある人
  • 50歳以上で、肥満や喫煙の習慣がある人
  • 抗リン脂質抗体症候群と診断された人--この人は、エストロゲン薬を飲むと年間10~15%の確率で血栓になる可能性があります
  • 遺伝性の凝固異常(ファクターVレイデンなど)を持っている人--これは白人では5%に存在します
特に、抗リン脂質抗体症候群の人は、避妊薬やホルモン療法を絶対に避ける必要があります。日本でも、この病気の患者が増えているため、診断されたら専門医に相談しましょう。

異なる患者がリスクシンボルと共に診察室で待つ、医師がチェックリストを持つ場面

医師としっかり話すためのチェックリスト

薬を処方されるとき、次の質問を必ずしてみてください。

  1. この薬は血栓のリスクを上げますか?
  2. 私の年齢・体重・病歴で、リスクはどれくらいですか?
  3. 予防のために、ストッキングや薬を勧められますか?
  4. 血栓の症状が出てきたら、どうすればいいですか?
  5. この薬をやめる必要がある場合は、代わりに何を使えますか?
医師のなかには、出血のリスクを過剰に恐れて、予防策を怠る人もいます。でも、血栓のリスクは、出血よりずっと命に関わる可能性があります。あなたの命を守るのは、あなた自身の声です。

最新の研究と今後の展望

新しい薬の開発も進んでいます。ファクターXIをターゲットにした薬(アスンデクシアン)は、臨床試験で血栓を半分に減らし、出血のリスクは増やさないという結果が出ています。今後、この薬が一般に使われれば、がん患者や高リスクの人の予防が大きく変わります。

また、遺伝子検査も進化しています。ファクターVレイデンやプロトロンビン遺伝子異常など、血栓のリスクを高める遺伝子を、5~7日で検査できるようになっています。しかし、薬を始める前に検査する習慣はまだ日本では広まっていません。今後は、薬を処方する前に「遺伝子リスク」をチェックするのがスタンダードになるでしょう。

まとめ:薬と血栓、あなたにできること

薬は命を救う道具ですが、副作用として血栓を引き起こすこともあります。でも、それは「避けられない運命」ではありません。正しい知識があれば、あなたは自分でリスクを下げられます。

  • 新しい薬を飲み始めたら、最初の3~6ヶ月は特に注意する
  • 足の腫れや息切れは「疲れ」じゃない--すぐに病院へ
  • ストッキングや抗凝固薬は、医師の指示通りに使う
  • 長時間座ったら、動く。水分をとる。これが一番簡単で効果的な予防法
  • 自分のリスクを知り、医師と正直に話す
血栓は、気づかないうちに起きる「サイレントキラー」です。でも、あなたが気づけば、それを防げるのです。

薬を飲んでいるのに、血栓の心配は必要ですか?

はい、必要です。特にエストロゲンを含む避妊薬、更年期ホルモン療法、がん治療薬を飲んでいる人は、血栓のリスクが高まります。日本でも年間数千人が薬に関連する血栓で入院しています。リスクが高いと分かれば、予防策を取ることができます。

血栓の症状は、すぐにわかりますか?

はい、わかりやすい症状があります。足が腫れて痛い、赤く熱を帯びる、片方の足だけが重い--これらは深部静脈血栓症のサインです。息切れ、胸の痛み、めまい、意識が遠のく--これらは肺塞栓症のサインです。どちらも、薬を飲み始めて3~6ヶ月以内に起こりやすいです。無理に我慢せず、すぐに病院へ。

抗凝固薬を飲むと、出血しやすくなるのでは?

はい、出血のリスクはあります。しかし、血栓が肺や脳に達すると、出血よりもはるかに命の危険が高いです。医師は、あなたの年齢、腎臓の機能、他の薬の飲み合わせを考慮して、出血リスクと血栓リスクのバランスを取って処方します。薬を勝手にやめると、逆に危険です。

圧力靴下は、本当に効果があるの?

はい、効果があります。特に、手術後や長時間の移動、入院中には、血栓のリスクを30~50%減らすことが臨床試験で証明されています。ただし、フィットが悪いと逆に皮膚を傷めます。足首、ふくらはぎ、太ももの3か所を測って、サイズを正しく選んでください。3~6ヶ月で新しいものに交換しましょう。

遺伝子検査は受けた方がいいですか?

家族に血栓の歴史がある、または過去に血栓を起こしたことがあるなら、受ける価値があります。特に、ファクターVレイデンやプロトロンビン遺伝子異常は、エストロゲン薬を飲むとリスクが爆発的に上がります。日本ではまだ普及していませんが、今後は薬を始める前に遺伝子検査が標準になる可能性が高いです。

飛行機の長旅で血栓を防ぐには?

1時間に1回は席を立って歩く。席に座ったままでも、足首を上下に動かす運動を30分ごとに10回やる。1時間にコップ1杯(240~300ml)の水を飲む。この3つを守れば、飛行機での血栓リスクは30%減ります。アルコールやカフェインは脱水を促すので、控えましょう。

避妊薬をやめたほうがいいですか?

すべての人にやめるようにとは言えません。若い健康な女性で、血栓のリスク因子(肥満、喫煙、家族歴)がなければ、リスクは非常に低いです。しかし、35歳以上、喫煙者、肥満、過去に血栓歴があるなら、エストロゲンを含まない避妊薬(プロゲステロンのみ)に変更することを強くお勧めします。