OTC鎮痛薬の比較:アセトアミノフェンとNSAIDsの違いと使い分け

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頭痛や腰痛、生理痛、風邪の発熱……日常で誰もが使うOTCの鎮痛薬。でも、アセトアミノフェンNSAIDs(イブプロフェンやナプロキセン)の違い、ちゃんと理解していますか?同じ「痛み止め」として売られていても、効き方、安全面、使うべき場面は大きく違います。間違えて使えば、肝臓や胃、心臓に深刻なダメージを与える可能性もあります。

アセトアミノフェンとNSAIDs、根本的な違いはどこにある?

アセトアミノフェン(商品名:タイレノールなど)とNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、どちらも痛みや熱を下げる効果があります。でも、その仕組みはまったく別物です。

アセトアミノフェンは、脳の中枢神経系でしか働きません。痛みの信号をブロックして、痛みを感じにくくするだけ。炎症(腫れや赤み)にはほとんど効きません。一方、イブプロフェン(イブプロフェン)、ナプロキセン(アレベ)、アスピリンなどのNSAIDsは、体中の細胞で働く酵素(COX酵素)を抑えます。これにより、痛みや発熱だけでなく、炎症そのものを減らすことができます。

つまり、関節が腫れて痛い、筋肉をひねって腫れた、生理痛で子宮が収縮している……こうした「炎症が原因の痛み」には、NSAIDsが断然効きます。逆に、単なる頭痛や風邪の発熱なら、アセトアミノフェンで十分です。

どれくらい効く?臨床データで見る実力差

痛みの軽減効果を数字で見ると、はっきりした差が出てきます。

膝や腰の関節炎(変形性関節症)では、NSAIDsは痛みを30~50%軽減するのに対し、アセトアミノフェンは10~20%程度。アメリカ家庭医学会(AAFP)の研究では、NSAIDsが炎症性の痛みに20~30%も優れているとされています。

一方で、片頭痛や一般的な頭痛では、アセトアミノフェンの有効率は70%以上。 Mayo Clinicのデータでは、このタイプの痛みにはアセトアミノフェンが第一選択とされています。生理痛でも、NSAIDsが効きやすいのは、子宮内膜のプロスタグランジンという物質が炎症を引き起こすから。アセトアミノフェンでは、この炎症を抑えることができません。

安全性:胃と肝臓、どちらがリスクが高い?

効き目が強いからといって、安全とは限りません。両者のリスクは、まったく違う臓器に集中しています。

NSAIDsの最大のリスクは胃です。年間2~4%の人が胃潰瘍や消化管出血を起こします。これは、COX-1酵素を抑えることで胃の粘膜を守る物質が減るため。特に高齢者や、既に胃の病気がある人には注意が必要。FDAは2015年から、すべてのNSAIDsのパッケージに「心臓病や胃のリスクあり」と明記するよう義務づけました。

一方、アセトアミノフェンは胃には優しい。食事の有無にかかわらず飲めます。でも、肝臓に負担をかけます。1日4,000mgが上限ですが、ハーバード・ヘルスは3,000mg以下に抑えるよう勧めています。なぜなら、過剰摂取による急性肝不全は、米国で年間15,000人以上が入院するほどの深刻な問題。しかも、多くのケースが「複数の薬を一緒に飲んでしまった」ことによる誤飲です。風邪薬や頭痛薬にアセトアミノフェンが含まれている場合、気づかないうちに過剰摂取してしまうんです。

高齢者の手が薬を置く様子、水に映る胃と心臓の損傷の幻影が見える。

誰に何を勧める?専門家のガイドライン

専門機関は、状況に応じて使い分けを明確にしています。

  • 子ども(12歳以下):アセトアミノフェンのみが推奨。NSAIDsは年齢制限や副作用のリスクが高いため、小児には基本使用不可。
  • 妊娠中:妊娠中期までならアセトアミノフェンが安全。NSAIDsは妊娠後期に胎児の心臓や腎臓に影響を与える可能性があるため、避けるべき。
  • 高齢者:胃の弱い人はアセトアミノフェンを優先。心臓病の既往歴がある人は、イブプロフェンよりナプロキセンのほうがリスクが低いと欧州心臓病学会が2021年に報告。
  • 関節炎や筋肉の炎症:NSAIDsが第一選択。アセトアミノフェンでは効果が不十分なケースが多い。
  • 頭痛や発熱:アセトアミノフェンで十分。副作用リスクが低いので、長期的にも安心。

一緒に飲んでも大丈夫?組み合わせのヒント

「どちらも効かないから、両方飲もう」というのは、非常に危険な考えです。

NSAIDsを2種類以上一緒に飲むと、胃出血のリスクが3倍以上に跳ね上がります。FDAは「複数のNSAIDsの併用は絶対に避けて」と明確に警告しています。

でも、アセトアミノフェンとNSAIDsを組み合わせるのは、むしろ推奨されています。ハーバード・ヘルスでは、「両方を低用量で併用すると、同じ効果を得ながら副作用を減らせる」と明言。例えば、イブプロフェン200mgとアセトアミノフェン500mgを4~6時間おきに交互に飲む方法は、医療現場でもよく使われます。

妊婦と子どもがアセトアミノフェンを手にし、NSAIDsは破壊されるように描かれた情景。

長期使用の注意点と最新の動向

毎日のように鎮痛薬を飲んでいる人は、特に注意が必要です。

NSAIDsを長く続けると、心臓発作のリスクが10~50%上昇する可能性があります。FDAは2021年、高用量のイブプロフェンを慢性使用する人への警告を強化。アメリカ心臓協会は2023年、既に心臓病がある人にはNSAIDsの使用を極力控えるよう勧めています。

アセトアミノフェンも、長期的な低用量使用で肝臓に負担がかかる可能性があります。2022年には、FDAがアセトアミノフェン製品のラベルに「肝障害の警告」をさらに強化しました。

一方で、価格はどちらも非常に安い。ジェネリックのアセトアミノフェン(500mg)は1錠あたり3~5セント、イブプロフェン(200mg)は4~7セント。コストパフォーマンスは高いですが、安全に使うことが前提です。

まとめ:あなたの痛みに合った選択は?

痛みの原因が「炎症」なら、NSAIDs。単なる「痛み」や「熱」なら、アセトアミノフェン。

・胃が弱い → アセトアミノフェン

・関節が腫れて痛い → NSAIDs

・子どもや妊娠中 → アセトアミノフェン

・心臓病の既往歴 → ナプロキセン(イブプロフェンより安全)

・風邪の発熱や頭痛 → アセトアミノフェン

薬を飲むときは、パッケージの「用法・用量」を必ず確認。複数の薬を飲んでいるなら、成分をチェックしてアセトアミノフェンが重複していないか確認しましょう。無理に我慢せず、正しい薬を選べば、痛みを早く和らげて、体も守れます。

アセトアミノフェンとイブプロフェン、どちらを先に試すべき?

痛みの原因が炎症(腫れ、赤み、熱感)でなければ、まずはアセトアミノフェンを試すのが安全です。胃への負担が少なく、子どもや妊娠中でも使えるため、第一選択として推奨されています。炎症がある場合は、イブプロフェンなどのNSAIDsが効果的です。

NSAIDsを飲むとき、胃を守る方法は?

食事と一緒に飲むのが基本です。空腹時に飲むと胃への刺激が強くなります。また、胃酸を抑える薬(ファモチジンなど)を併用するのも有効です。ただし、長期的にNSAIDsを飲むなら、医師と相談して胃の保護薬を処方してもらうほうが安心です。

アセトアミノフェンを飲みすぎると、本当に肝臓が壊れるの?

はい。1日4,000mg以上で肝障害のリスクが急激に上がります。特に、風邪薬や頭痛薬にアセトアミノフェンが含まれている場合、気づかないうちに過剰摂取してしまうのが危険です。米国では年間15,000人以上がアセトアミノフェン過剰摂取で救急搬送されています。薬の成分を必ずチェックしましょう。

ナプロキセンとイブプロフェン、どちらが安全?

心臓への影響を考慮すると、ナプロキセンのほうがイブプロフェンよりリスクが低いとされています。欧州心臓病学会の研究では、ナプロキセンは心臓発作のリスクを増加させにくいと報告されています。ただし、どちらも胃への負担はあります。長期使用は医師の指導のもとで。

生理痛には、アセトアミノフェンじゃなくてNSAIDsがいいの?

はい。生理痛は、子宮内膜から出るプロスタグランジンという物質が原因で、これが炎症を起こして痛みを引き起こします。NSAIDsはこのプロスタグランジンの生成を抑えるので、アセトアミノフェンよりも効果が明確です。生理痛でよく効くのは、イブプロフェンやナプロキセンです。

コメント

yuki y
yuki y

アセトアミノフェンとイブプロフェン、どっちも家に常備してます

12月 15, 2025 AT 17:22

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