一般的な市販薬:使い方、副作用、安全性の徹底ガイド

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市販薬は、病院に行かなくても薬局やスーパーで手に入る薬です。頭痛、風邪、胃もたせ、アレルギー――こうした日常的な不快症状に、多くの人がまず手を伸ばすのが市販薬です。日本でもアメリカでも、8割以上の大人が何かしらの市販薬を日常的に使っています。でも、『市販だから安全』というのは大きな誤解です。間違った使い方をすると、肝臓や腎臓に重大なダメージを与えることもあります。この記事では、最もよく使われる市販薬の種類、正しい使い方、注意すべき副作用、そして安全に使うための鉄則をわかりやすく解説します。

痛みや熱を下げる薬:アセトアミノフェンとNSAIDs

頭痛や歯痛、月経痛、風邪で熱が出たとき、まず思い浮かぶのが解熱鎮痛剤です。主に2種類があります:アセトアミノフェン(タイレノールなど)とNSAIDs(イブプロフェン、ナプロキセンなど)です。

アセトアミノフェンは、胃に優しく、出血しやすい人や小児にも使いやすい薬です。1回の用量は325〜1,000mg、1日最大4,000mgまでが安全とされています。でも、この薬の最大のリスクは肝臓へのダメージです。1日分を一度に飲んだり、お酒を飲みながら使ったりすると、急性肝不全になる可能性があります。アメリカでは毎年15,000〜18,000人がアセトアミノフェン过量で救急搬送されています。

一方、イブプロフェン(イブプロフェン、モートリン)やナプロキセン(アレブ)は、炎症を抑える力が強いです。筋肉の痛みや関節炎、月経痛にはアセトアミノフェンより効きやすいです。しかし、胃の粘膜を傷つけ、胃潰瘍や出血を起こすリスクがあります。特に65歳以上や胃腸の病歴がある人は注意が必要です。

どちらを選ぶべきか? 胃が弱いならアセトアミノフェン、炎症が強いならNSAIDs。でも、どちらも1日分を超えて使わないこと。薬のパッケージに書かれている「1日最大量」を守ることが命を守ります。

風邪・花粉症の薬:抗ヒスタミン薬と去痰薬

くしゃみ、鼻水、目のかゆみ――花粉症や風邪の症状には抗ヒスタミン薬が使われます。ここにも大きな違いがあります。

昔からあるジフェンヒドラミン(ベンエードル)は、効果は高いですが、眠気を強く引き起こします。運転や機械操作、仕事中に飲むのは危険です。アメリカの連邦航空局(FAA)は、この薬を飲んだ後12時間はパイロットが飛行しないよう厳しく禁止しています。

一方、ロラタジン(クラリチン)やフェキソフェナジン(アレグラ)は、第二世代の抗ヒスタミン薬です。眠気はほとんどなく、1日1回で効果が持続します。花粉症の人は、この2つを日常的に使うのがおすすめです。効果は昔の薬とほぼ同じなのに、安全面で圧倒的に優れています。

咳や痰にはデキストロメトルファン(デルシン)とグアイフェネシン(ムシネックス)が使われます。デキストロメトルファンは咳を抑える、グアイフェネシンは痰を出しやすくします。しかし、これらは子どもに与えてはいけません。FDAは4歳以下の子どもへの使用を2008年から禁止しています。過去37年間で115人の子どもがこの種の薬で亡くなっています。

胃の不快感:胃酸を抑える薬

胃もたれ、胸やけ、逆流性食道炎には、3つのタイプの薬があります。

  • 制酸剤(タムズ):即効性があり、一時的に胃酸を中和します。カルシウムを含むので、骨粗鬆症の人に適しています。
  • H2ブロッカー(ペプシッド):数時間効果が持続。軽い症状に。
  • プロトンポンプ阻害剤(プリロセック):1日1回で、強い胃酸抑制。効果は長いですが、長く使いすぎると腎臓病のリスクが20〜50%上がります。

2023年のJAMA内部医学誌の研究では、PPIを1年以上飲み続けた人の慢性腎臓病の発症率が高かったことが明らかになりました。胸やけが頻繁に起こるなら、病院で原因を調べるべきです。市販薬で誤魔化し続けると、重い病気を見逃す可能性があります。

高齢者が抗ヒスタミン薬やPPIで体に深刻な影響を受けている様子。

下痢・便秘の薬:注意が必要な市販薬

下痢にはロペラミド(イモーディウム)がよく使われます。1回2mg、1日最大6mgまで。でも、この薬は「止める」だけの薬です。感染性の下痢(食中毒など)で使うと、ウイルスや細菌が体内に残り、症状が悪化することがあります。下痢が2日以上続くなら、病院へ。

また、腎臓の病気がある人はロペラミドの用量を減らす必要があります。腎機能が悪いと薬が体に残り、過剰反応を起こす危険があります。

便秘には、センナやビスコールなどの刺激性下剤がありますが、これらは長期使用で腸の働きを鈍らせます。自然な排便を促す食事や運動を優先しましょう。

妊娠中・高齢者・子ども:特別な注意が必要

妊娠中は、使える薬が限られます。アメリカ産婦人科学会(ACOG)は、妊娠20週以降はNSAIDs(イブプロフェンなど)を絶対に避けるように勧めています。胎児の腎臓に悪影響を及ぼす可能性があるからです。代わりに使えるのはアセトアミノフェンだけです。

65歳以上の高齢者には、ジフェンヒドラミン(ベンエードル)を睡眠薬として使うのはやめましょう。2021年のJAMA内部医学誌の研究で、この薬を飲んだ高齢者の転倒リスクが30%も上がることが証明されています。転倒は骨折や脳出血の原因になります。

子どもには、大人の薬を半分に切って与えないでください。体重に応じた正確な用量があります。液体の形で、10〜15mg/kgのアセトアミノフェンが安全な基準です。複合薬(風邪薬+咳止め+抗ヒスタミン)は、過剰摂取のリスクが高いため、避けた方がいいです。

薬剤師が複合薬の危険を警告する中、異なる客が誤った薬を手に取る場面。

市販薬の安全な使い方:5つの鉄則

  1. パッケージの「薬効成分」を必ず読む:「アセトアミノフェン500mg」と書かれているか確認。他の薬にも同じ成分が含まれていないかチェック。
  2. 1日最大量を守る:薬の裏に書いてある「1日最大量」は、命のラインです。それを超えると、肝臓や腎臓が壊れます。
  3. 複合薬は避ける:「風邪薬+咳止め+抗ヒスタミン」の3種類が入った薬は、同じ成分が重複して過剰摂取になる危険があります。
  4. アルコールは絶対に避ける:アセトアミノフェンとお酒は、肝臓に致命的なダメージを与えます。
  5. 2日以上改善しないなら病院へ:市販薬は「一時対応」です。症状が続く、悪化する、熱が続くなら、それは病気のサインです。

薬局の薬剤師に相談する勇気

アメリカでは、93%の人が薬局から5マイル以内に住んでいます。日本でも、薬局は身近な存在です。薬剤師は、あなたの病歴や飲んでいる薬を知った上で、正しい市販薬を勧めます。例えば、高血圧の薬を飲んでいる人に、NSAIDsを勧めたら危険です。糖尿病の人には、糖分の入ったシロップ薬を避けるように助言します。

薬剤師に「この薬、私の病気と合わない?」と聞くのは、恥ずかしいことではありません。それは、自分の健康を守る行動です。薬局に立ち寄ったら、薬を買う前に1分だけ立ち止まって、薬剤師に聞いてみましょう。

まとめ:市販薬は「便利」だけど「危険」でもある

市販薬は、私たちの生活を大きく便利にしました。でも、便利だからといって、軽く扱ってはいけません。アセトアミノフェンの肝毒性、NSAIDsの胃出血リスク、抗ヒスタミン薬の高齢者への転倒リスク、PPIの腎臓への長期影響――どれも、正しい知識があれば防げる問題です。

薬は「治すもの」ではなく、「症状を和らげるもの」です。根本的な原因を放置したまま、薬でごまかし続けると、小さな不調が大きな病気になります。市販薬を使うときは、常に「なぜこの薬を選ぶのか」「どれだけ飲んだら安全か」「いつまで使えばいいか」を意識してください。

あなたの健康は、あなた自身の知識と判断で守ることができます。薬のパッケージを読む習慣、薬剤師に聞く勇気――それが、本当に安全な生活を送る第一歩です。

市販薬は本当に安全ですか?

市販薬は「医師の処方箋がなくても買える」薬であり、安全性は確認されています。しかし、『安全』とは『どんな量でも大丈夫』という意味ではありません。過剰摂取や、他の薬との飲み合わせ、持病との相性によって、重い副作用や臓器障害を引き起こす可能性があります。特にアセトアミノフェンの過剰摂取は、毎年何万人も救急搬送される原因です。安全に使うためには、パッケージの用量を厳守し、長期間使わないことが重要です。

アセトアミノフェンとイブプロフェン、どちらがいい?

アセトアミノフェンは、胃に優しく、小児や妊娠中にも使える点で優れています。ただし、肝臓に負担がかかります。イブプロフェンは炎症を抑える力が強く、関節痛や筋肉痛に効果的ですが、胃潰瘍や腎臓へのリスクがあります。胃が弱い、出血しやすい、腎臓の病気がある人はアセトアミノフェンを。炎症が強い、熱が続く場合はイブプロフェンを。どちらも1日最大量を超えないようにしてください。

花粉症の薬で眠くなるのはなぜ?

眠くなるのは、第一世代の抗ヒスタミン薬(ベンエードルなど)に含まれるジフェンヒドラミンという成分の副作用です。この成分は脳の中枢神経に働きかけ、眠気を引き起こします。一方、第二世代の薬(クラリチン、アレグラ)は脳に入りにくく、眠気はほとんどありません。花粉症で日常的に薬を飲むなら、眠くならない第二世代の薬を選ぶのがベストです。

子どもに市販薬を飲ませてもいい?

4歳以下の子どもには、咳止めや鼻水止めの市販薬は絶対に与えないでください。FDAは2008年からこの年齢層への使用を禁止しています。過去に115人の子どもがこの薬で亡くなっています。子どもには、体重に合わせた正確な用量のアセトアミノフェンやイブプロフェンのみを、医師や薬剤師の指導のもとで与えるのが安全です。複合薬はさらに危険です。

市販薬を長く使い続けても大丈夫?

いいえ。市販薬は「一時的な対処」のためのものです。胸やけが毎日続く、頭痛が週に3回以上ある、鼻づまりが1か月以上続く――このような場合は、市販薬でごまかさずに病院へ行くべきです。プロトンポンプ阻害剤(PPI)の長期使用は腎臓病のリスクを上げ、抗ヒスタミン薬の長期使用は認知機能の低下と関連しています。症状が続くなら、原因を調べることが健康の第一歩です。